スマホ育児について読者さんからご質問をいただきました。
あくまで私の見解ですが参考までに記事にしておきたいと思います。
「小さな子にスマホを見せたくない」これからの時代それが正しいのか、というご質問
質問者さんに許可を頂いたうえで、ご質問を紹介します。
当時、5歳のお子さまの保護者の方からいただきました。
スマホ育児のような親が増えているなと...私も困ったときは頼っているのが現実です.
初めは飛行機の離着陸の時だけ...と子供に手渡すようになったのですが,子供も学習してIT機器の楽しさを身に付けている気がします.
ただ,私は小さな子供に必要ないと思っていて使わせたくないです.ただ,これからの時代それが正しいのかも少し心配になります.
(中略)ぜひまゆさんの意見も聞きたいです.
IT機器の適切な与え方。正解はないとわかりつつも、どんな考え方があるのか知りたい。そんな思いが感じられました。
スマホ育児とは
ここでおっしゃっている「スマホ育児」。聞き慣れない方もいるかもしれないので私なりの解説を加えます。
スマホやタブレットなどの端末に子守をしてもらう、そんなイメージの言葉です。一昔前は、「テレビ育児」などと言われていたかもしれません。
いずれにしても「あるべき育児ではない」「育児を怠けている」みたいな、ちょっとネガティブなニュアンスのある言葉だと感じます。
早い方は0歳から、動画や音楽(ホワイトノイズなども含め)などに触れさせているでしょうし、
幼稚園くらいに進むと動画以外にアプリやゲームをさせているかもしれません。
小学生くらいになると、今度はゲーム機器が登場してきたりして。
子どもの健全な成長を願うがゆえに、IT機器の使いすぎや誤使用からくる精神的・身体的影響や、その他の成長の機会損失などの心配があるのだと思います。
あえて言い換えると寝食忘れて画面にかじりついている子どもの姿が、親(そして社会)が望ましいと思う子どもの姿と相容れない、ということではないでしょうか。
ここからは、2年前から変わっていない私の見解、そして現在の状況を述べていきます。
ちょこっと裏事情
実はこのご質問、今から約2年前に頂いたものです。質問者さんにはすぐにメールでお返事をして、そのときにブログ掲載許可も頂きました。
しかし、その後下書きに埋もれたままになっていたんです(汗)
せっかく許可頂いていたのにすみません〜!!!
なぜこのタイミングで公開しているかというと、ちょうど最近、この話題に触れて思い出したからです。はい、ただのズボラです。本当にすみません。
しかし2年振りに自分の文章を読み返すと、細かな経時的変化はあれど、「根っこの部分はまったくブレていないな自分」と感じました。
そのブレていない部分も含め、2年越しですが公開しようと思います。
ご質問者さん、そしてこの下書きを思い出させてくれた相談者さん、その節は本当にありがとうございました。
我が家の「スマホ育児」の様子
ここからが、2年前の私が書いた回答です。青字は、現在の私が挿入した注釈です。
これからの生活にテクノロジーは避けて通れない
スマホ(やタブレット)育児の件。。。
これは私も現在進行系で悩んでいます。
ちょっと長くなりますので、この先はお時間があるときにゆっくりお読みください。
今はマサイ族でもスマホを使う時代。(今読み返すとマサイ族に極めて失礼ですね。なぜ名指しする必要があったんだろう。僻地では電話よりもスマホが先に普及しているのは確かです。)
これからの生活には、テクノロジーは完全に避けて通れないと思っています。
知ったうえで完全に断つのは別ですが、それを子ども自身が決められるようにするのが教育だと思います。
そのためには、私含め大人がまずメリットもデメリットも理解しないとですね^^;
我が家の「スマホ育児」
さて今の就学前の年齢だと、まだ動画やゲームアプリが主な心配かと思いますが、なしで過ごせるならそのままやり過ごしたいですよね。
ただ、小学校に入るとなんやかんや一気にSNSやオンラインゲームなど、今では想像もつかない心配が降り掛かってくる恐怖がありますよね。
また、お友達と我が家のルールが違ったり、家族や親戚のルールと違ったり、気を使う場面も増えそうです。(当時の予想通り、小学生にあがった長男は各家庭のルールの違いに面食らっています。テクノロジーに限ったことではありませんが。)
正解はないとは思うのですが、我が家の場合。
長男が年長、次男が年少です。
最初の導入こそ、できる限り遅らせる努力はしました。
でも一度導入されてからは、絶対禁止はしておりません。
ただ子どもの都合ではなく、親の都合でどうしても使いたいときだけです。
頻度でいうと、結構まちまちですが、2週間に1回〜4回くらいでしょうか。
雨の日や手持ち無沙汰になった夜が多い気がします。
夫だけで子守しているときも、頻度が増える気がします。
(我が家の場合、意外と夫も曲者です笑)
使うときはなるべく、使い始めにやめる時間を決めています。
守れない場合も多々ありますが^^;
(今は長男が小2、次男が年長です。このお返事を書いたあと、ラインナップにSwitchが加わりました。今では柔軟なルールのもと、タブレットとSwitchは子どもの生活に溶け込んでいます。)
我が家の「スマホ育児」で気をつけていること
どうせ使うのであれば、第一に、自分の身の守り方をセットで教えることが大事だと考えます。
端末を使うことによる視力や姿勢、運動量への影響について子どもに話します。
有害な情報に触れないように、キッズ版のアプリも使っています。
「ながら」使いはしません。(移動中は使います)
第二に、利用するアプリには教育的な要素も取り入れています。
まだ早いうちはチャンネルを制限した動画だけでしたが、最近は英語のゲームアプリを導入しました。
今後は様子を見ながらタイピング、算数など適宜アプリを導入して使っていこうと思っています。
うちは兄弟なので、譲り合って使うことも学んでほしいと思っています。
スマホに頼りすぎない工夫
そして、回数や時間を制限するのは親も子どももしんどいと思うので、ほかの時間の過ごし方もいろいろ提示してきました。
ジェンガやUNOやトランプ、ボードゲームなどは、大人がいないとまだ楽しめないのですが、余裕があるときは使います。
また、ブロックやパズルや工作(ただ空き箱や紙や毛糸くらいですが)だけで、結構長い間子どもだけで過ごせるようになってきました。
手先を使って集中する時間は、子ども時代にとても大事だと考えています。
公園に行って遊ばせるのも、大きくなった今は親は見ているだけで大丈夫なので、休憩になるときもあります。(そうでないことも多々ありますが^^;)
このように、端末を使い始めても比重は少なめになるように、ほかの活動を諦めないこと。
端末を利用するなら、少しでも教育要素を取り入れること。
そして、端末の害を理解して身を守れるような子どもの意識付け。
今の年齢だと、それで十分ではないでしょうか。
私も参考にしている「みんなで楽しめる遊び」の参考書たちです。端末に頼らずに移動中でも遊べるアイディアもたくさん。
ついでにプログラミング教育について
ご質問への回答はここまでです。プログラミング教育について、少し付け加えます。
このようにスマホ育児の行き過ぎを心配する保護者がいる一方で、どんどん先取りをしていきたい保護者もいます。
2020年以降に順次施行されている小・中・高の学習指導要領ではそれぞれ「情報活用能力に含まれる資質・能力の育成」と「ICTを活用した学習活動の充実」が盛り込まれています。その流れに呼応するかのように民間のプログラミング教室も増えています。そして感度の高い保護者ほど、先取りをしていく構造になっています。
ただ、私は今の日本の”プログラミング”ブームにはなんだかテクノロジーや端末偏重なところを感じています。だからこそ不安に感じる保護者がいるのも無理はない。
小学校のプログラミング教育にありがちな勘違い
小学生向けの「プログラミング教育」には、勘違いが多いように思えます。下手すると学校の先生でも履き違えている可能性があるくらいの勘違い製造機です。
同じ言葉でも、高校や社会人向けのプログラミング教育とはニュアンスが違います。
小学校の現行学習指導要領に書かれている「プログラミング教育のねらい」は、このとおり。
プログラミング教育は、学習指導要領において「学習の基盤となる資質・能力」と位置付けられた「情報活用能力」の育成や情報手段(ICT)を「適切に活用した学習活動の充実」を進める中に適切に位置付けられる
文部科学省. “小学校プログラミング教育の手引(第三版)”. 2020年2月. https://www.mext.go.jp/content/20200218-mxt_jogai02-100003171_002.pdf, (参照 2022-1-28).
小学校の「プログラミング教育」はあくまで情報活用能力育成や情報手段の活用機会の「一部」という位置づけであり、プログラムを書けるようにすることが目的ではありません。
でも実際に目に入ってくるのは「コードが書ける」「サイトを作れる」「ロボットを動かせる」プログラミング教育のことばかり。そりゃ、目に見えない情報活用能力よりも成果として映えますから、ある意味当然です。だから、勘違い製造機。見せかけのイメージにしかすぎません。
誰が悪いってわけではありませんが、特に実体がないことを正しく伝えるのって難しい。
プログラミング教育は手段であり、目的ではない
少なくとも小学校で語られるプログラミング教育は、より高次な情報活用能力の育成の一部です。
私もこの学習指導要領における位置づけには概ね賛成で、情報リテラシーや端末の扱いは、これから人たちにとって最低限の必要知識だと思います。
家事や簡単なケガの手当や健康習慣などの知識と同様で、別に知らなくてもただちに影響がないでしょう。でも人生のウェルビーイングのためにはどれも必要なことです。
私が「プログラミング教育」の見せかけのイメージにとらわれにくいのは、手段と目的をわけて考えているからかもしれません。
情報リテラシーは、実は端末がなくても学んでいくことができるんです。しかもタイピングなどの扱いですら、端末がなくても学べます。
アンプラグド教育
ここは私もまだ勉強不足なのですが、海外にはunplugged educationという概念というか教育理念のようなものがあります。
英語ではunplugged education、直訳するとプラグを抜いた教育。なんのこっちゃわからないかもしれません(笑)
要は、電気機器(情報端末含む)に頼らない教育のことです。
本当にそんな教育が存在するのか?と思う方は、ニュージーランドのカンタベリー大学が(おそらく小中学生に)コンピュターサイエンスを「アンプラグド」で教えている授業動画があります。少し古いですが。
また、キーボードなしでタイピングを教える教材もインターネットにはたくさんあります。
実際、世界ではそもそも電気や端末やインターネットへのアクセスが平等ではありませんが、だからといって情報活用能力の育成機会からも絶たれるわけではないんですよね。
「良い人生を送るために大事なことはなにか」「限りあるリソースを活用していかに継承していくか」という発想と工夫はどこでも起こりえます。
だからアンプラグド教育は別にテクノロジーや端末を遠ざけるものではありません。むしろ、テクノロジーとの共存を提案しているものだと私は思います。ただ、依存していないだけで。
裏を返すと、小学校でやろうとしている「プログラミング教育」にはテクノロジーは必須ではないともいえます。
「敵」はテクノロジーよりも罪悪感なのでは
ただでさえ現代の育児って、いつも「なにか」との戦いです。たとえば…
- 「誰かの理想」と現実とのギャップと罪悪感
- 新しい技術や制度がもたらす期待と不安
- 子育て理想主義が生み出す罪悪感のようなもの
だからこそ、たまに意識的に「なにが悪いねん」と開き直ったくらいがちょうどいいのかもしれません。
スマホやタブレットを育児に取り入れてみる。違和感があれば都度やり方を工夫する。
子どもや育児パートナーときちんとコミュニケーションが取れていれば、軌道修正は後からいくらでもできるはずです。
そもそも、あとからの修正ができない生き方って苦しくないですか?自分で首を締めることになりません?
親もアップデートしよう
1990年代後半、私は小5から学校で正式にタイピングを学びました。初めて自分のメールアドレスを作ったのもこの頃です。私の成長はインターネットの隆起とともにあります。
タイピングスキルは私世代には必須ですが、最近は音声入力の精度がどんどん上がってきているので、これからはタイピングスキルの重要性も下がってくるかもしれません。
今、小学校の連絡帳の内容はタブレットで確認しています。最近の一部の高校生は、学校関係者との連絡でSlackを使いこなしているそうです。
家庭でのテクノロジーの使用をどれだけ遅らせようと、社会生活を営むうえでは必要になる局面が必ず訪れることは確かです。
それは、必ずしも親の想像している訪れではないかもしれません。いつかくるその日のために、子どもが親の話を聞いてくれるうちに、親も知識武装しておく必要があると感じています。
自宅で学べる小中学生向けのプログラミングスクールがこの『デジタネ』(旧D-SCHOOLオンライン)です。リアル教室もあります。
我が家の長男はマインクラフトというゲームが大好き。このスクールではマインクラフトでミッションをクリアしながら楽しくプログラミング学習ができてしまうそうです。
なんと英語&プログラミングのコースもあるというので驚き。
近くに教室がないご家庭でも、プログラミング学習の先取りができますね。
ITxものづくりならこちらのリタリコワンダー。教室は首都圏に多いですが、オンラインならどこからでも通えます!
ゲームやアプリ、ウェブサイト、ロボットなどを扱っています。
参考図書
このテーマについて知識武装するときは、子どもの成長のこと&テクノロジーのこと、両方について同時に知る必要があります。
これがすべてではありません。この一覧を参考に、アンテナを立ててみてください。
臨床児童精神科医の吉川徹先生による本。子どもたちのゲーム・ネットとの付き合い方を子どもの発達の目線から優しく指南してくれます。
こちらはグリーというソーシャルメディア会社に所属しながらネットリテラシーの啓発活動をしている小木曽さんの本。前提知識がなくてもわかりやすい内容になっています。
メディア研究&実業者として活動されている石戸奈々子さんの著書。
現代の子どもの健全な成長発育を阻害する要因って、テクノロジーの他にもあります。そして、年齢期ごとにその特性も変わってくる。そういう広い文脈で捉える歳に便利な教科書的な一冊。
こちらも、ネットやテクノロジーに限らず広い文脈で子どもの問題を捉えるための教科書。
テクノロジーがうまくハマればこんな素敵な未来の科学者が生まれるのか、と参考になる自伝&リソース集。Rasberry PiやArduinoが欲しくなる。