私はかつて、アメリカでボーディングスクールの高校で4年間学びました。
今年の6月に初めて同窓会に参加し、久しぶりに寮で2泊して、当時の感覚が少し蘇ってきました。
あの当時は当たり前のように過ごしていたけど、これ全然当たり前じゃないし、むしろ異常かもしれない(笑)というようなこともありました。
そこでボーディングスクール生活を4年送った私の「ボーディングスクールあるある」を思い出せる限り書き出してみます。
なかには、ボーディングスクールに限ったことじゃないことも含まれるかもしれません。
でもボーディングスクール出身生なら「あーたしかにね」とうなずいてくれるものばかりです。
ボーディングスクールは、よくも悪くも特殊な施設。
そんな全寮制の生活の一部を楽しんでいただければ幸いです。
ボーディングスクール出身と言うと「え、金持ち?」と聞かれる
ボーディングスクールとひとくくりに言っても、学校の方針によって生徒の属性の割合は異なります。
私が通っていた学校についていうと、富裕層の方も、全然そうじゃないひともいます。
私は当時の45%の学費を学校に援助してもらっていました。(成績優秀だからではなく、経済状況に応じて出してもらっていました)
全額出してもらっている子も、全額自腹の子もいます。
ボーディングスクール出身だからといって、経済事情は様々です。全員がいわゆる金持ちとは言い切れません。
寮に入っていたと言うと「え、問題児?」と聞かれる
これは1つ目の別バージョンです。
世の中には、ボーディングスクール=寮=矯正施設という図式も存在します。
各国のボーディングスクール史にはその図式にまつわる残酷な過去があるのも事実です。
そして今も、いろんな目的のための寮制学校が存在しています。そういう経緯で寮制学校を認知している方からすると、寮に入っていたというと警戒か同情の目で見られます。
ほかにも「家族とうまくいっていない」「家族に見捨てられた」と見てくるひともいます。
広い世の中です。そのように見てくる人も存在するんだな、と認識しながら堂々としていれば問題ありません。
平日の予定は朝7:30-夜22時までほぼ固定
ボーディングスクール生の毎日は忙しいです。
朝から当番仕事、授業、昼食、クラブ活動、部活、夕食、強制自習時間などをこなしていると、あっという間に門限の22時です。
通学時間がない分、活動が詰め込まれています。
夜も学校にいる
ボーディングスクールだから当然ですが。
つまり、朝、目が覚めても学校にいます。
毎日が林間学校状態です。
でも通学時間が少しで済むので、起きて5分後に教室、というのは実現可能です。
忘れ物をしてもすぐに取りに戻れるのもメリット。
週末も学校にいる
近くに実家があるひとは、帰宅するひともいます。
でもかつての私のように、長期休暇以外は学校に缶詰なひともいます。
学校も週末用のアクティビティを用意してくれたり、友だちもいるし、常に誰かと話したりぶらぶらしているので手持ち無沙汰はあまりないかな。
外出のたびに「チェックアウト」しないといけない
学校に住んでいるボーディングスクール生は、学校の敷地を出て買い物や息抜きをしに行くことがありますが、そのたびに「何時に出て」「どこに行って」「何時に戻る」かを報告します。
正直、18歳にもなって毎回これをやるのはしんどいものがありますが、学校は命を預かっている以上、どこにいるか把握しておかないといけないので仕方がありません。
通学生に学校を連れ出してもらう
ボーディングスクールで寮生をやっていると、いかに親切な通学生とお近づきになれるかで行動範囲が大きく変わってきます。
通学生や実家が近い寮生にくっついて、その保護者に運転してもらっておでかけやお泊りに行ったことは何度もあります。
他のやり方として、寮生同士でお金を出し合ってタクシーやハイヤーで出かけるという技もあります。
門限に慣れている
私の在学中は、門限は22:00でした。週末は少し遅かったかな。
この時間に、寮で点呼があるので戻らないといけません。
高校生だとこれくらいの門限は普通でしょうが、毎日22:00まで外出しているのは珍しいかもしれません(どうだろう)。
特に上級生になると、ほぼ毎日、門限ギリギリまで他の寮の友だちや恋人とラウンジや屋外で過ごし、門限ジャストに駆け込むという状態になります。
ひとによっては、門限ギリギリにピザや中華のデリバリーを受けとって駆け込むというパターンも(笑)
消灯後に布団をかぶって内職
ボーディングスクールは、子どもを預かっている責任感と、集団生活の規律で、消灯ルールが厳しいです。
私の1年目(中3)は22:30で、最終学年(高3)では12:00に少しずつ延長されていきます。
でも、みんなやっています。
部屋の電気を消しても、窓やドアから光がもれないように布団をかぶったり目張りをして、内職を。
内職といっても、終わらなかった宿題の場合もあれば、友だちや恋人とテキストしたり、様々です。
夜中の消防訓練で起こされたことがある、何度も
これもボーディングスクールの宿命です。
避難訓練が、真冬の夜中も容赦なく開催されます。
実は真冬の夜中はまだマシかもしれなくて、
中途半端な時間だと、なかにはシャワーや着替え中のひともいて、一度シャンプーまみれの頭で出てきた女子生徒がいて悲惨でした。
それだけ安全に真剣なのですが、自宅だとそうそうない体験です。
私の母校では寮が複数あり、ひとつずつ訓練を実施するので、遠方からアラームが聞こえてくると「次はうちか」と身構える癖もつきました。
なんの能力。
周りが騒がしくても集中できてしまう
課題やエンタメに集中したいとき、プライベート空間が皆無なボーディングスクールでは常に妨害がつきものです。
部屋にいても、誰かがノックしてきたり、隣の部屋や共有スペースで騒いでいたり。
でも次第に自分だけの集中スイッチが手に入るので、諦めずに工夫を続けましょう。
退学させられた知り合いがいる
それも一人や二人ではなく(笑)
これはボーディングスクールに限ったことじゃないかもしれませんが。
4年もボーディングスクールに通っていると、毎年誰かしらトラブルを起こして退学やら停学やらしている人がいます。
よくあるのは、タバコ・酒やドラッグ系の校則違反です。
私の在学中に衝撃的だったのは、人の敷地への不法侵入でごっそり退学させられた集団とか。
ボーディングスクールに行っている子も、「いい子」ばかりではなく、普通にいろんな子がいます。
ドラッグをやっている知り合いがいる
はい、います。
ドラッグといっても、いわゆるソフト系(マリファナとか)です。
ハード系(コカインとか)を扱っていたひとはさすがに知りません。いても知りたくもない。
この項目を上と別で立てているのは、ドラッグやっていても「うまくやっているからか」、卒業まで在学している子がいるからです。
常習的なひととそうでない人の違いなのでしょうか。
あと、学校で禁止されていなくても、処方された薬品を用法・用量を超えて使用(依存)しているタイプの子もいます。
いずれも私はまったく興味がなく、深入りしないので、勧められたこともありません。
「傍観者は加害者と同じ」と言いますが、薬に手を出さないとやっていけないほど困っている10代の友だちに、なにかできたことがあったのかもしれないな、と思うことがあります。
聞きたくもないウワサ話を聞かされる
ボーディングスクールは狭い世界です。そして学校に住んでいるということはプライバシーがかなり低い。
すると、「誰と誰が」付き合っただの、別れただの、復縁しただの、浮気しただの、「どこで」など、ウワサ話が秒で広まります。
それが先生同士とか生徒同士ならまだいいんですが、先生と生徒の話となるともう聞けたもんじゃないです。
でもプライベートな空間がないから、二人きりになるのが難しいのはちょっと同情したくもなります。
音楽の個別練習室を本来の目的以外で利用したことがある
学校には、楽器の個別練習室がいくつかあります。
上の項目でも書いたように、ボーディングスクールのカップルはプライベート空間に飢えているので、こうした部屋も便利に使われることがあります。
全員じゃないですよ、都市伝説みたいなものです(笑)
あとはお察しください。
トイレの音をやり過ごすテクニックがある
寮のトイレは共用のことが多いです。
集団生活をしていると次第に気にならなくなると思いますし、知らずにタイミングやテクニックが身についてきます。
卒業後も役に立つスキルだと思います(笑)
プライバシーの概念が人からずれている
そろそろお気づきでしょうが、ボーディングスクールに通っているとプライバシーの概念がどんどん世間一般からずれていきます。
そこまで心配しなくても大丈夫です、たいていは卒業後にまた矯正されていきます。
先生の家でくつろいだことがある
ボーディングスクール、学校にもよりますがキャンパス内に住み込みの先生もいます。
私の学校では、寮に住んでいる先生、キャンパス内の戸建てに住んでいる先生、学外に住んで通勤している先生、様々です。
生徒が普段食べる食堂で、朝食・昼食・夕食を一緒に食べることもあれば、
先生のリビングでテイクアウトを食べるときもあったり。
先生の子どもを子守したこともあります。
授業やクラブや部活の外で先生と絡む機会が多いのは、ボーディングスクールならではかもしれません。
先生の家の洗濯機を借りたことがある、何度も
これも学校によりますが、私の在学中の母校ではコインランドリーがなくて、学校のランドリーサービスは週1の集荷で翌週の配達でした。
つまり汚れた服は最長2週間、着れなくなる。
それが嫌で、私は週に1度、学外のコインランドリーに出張していました。それはそれで友だちと行くから週1の息抜きになって楽しい。
でもどうしても間に合わないときは、先生に頼み込んで洗濯機を貸してもらうこともありましたね。
洗濯の頻度が週1でも気にならない
今の私は1~2日に1回洗濯機を回しますが、ボーディングスクール在学中は週1でした。
思春期の部活の服とか、タオルとか、ちょっと想像したくないですよね(笑)
でもこれは物理的にも時間的にも仕方がない。
服のローテーションが週間制になる
洗濯が週1なので、最低でも7日分の服が必要になります。
するとなぜか毎週同じ曜日には同じ服を着ているという現象も起きがちです。
スウェットとビーサンがお友だち
とはいえ、一番ヘビロテなのは結局スウェット(丈夫)とビーサン(靴下履くのが面倒)です。
私の母校はドレスコードがなかったので、ツワモノは明らかに寝間着で授業に出ていました(笑)
洗濯物を減らすためのハックだったのかもしれません(笑)
ビュッフェでの食事ハック
ボーディングスクールではビュッフェスタイルの食事が多いです。
ほぼ毎日3食ビュッフェなので、盛り付けや量のコントロールはかなり慣れています。
大人になってからレストランやホテルのビュッフェに行っても慌てることはありません。
むしろ注文するよりも裁量があってやりやすいくらい(私だけかな)。
食堂のトレイの活用法を2つ以上知っている
食堂にはトレイがあるんですが、ビュッフェで食器を運ぶ以外にも使い方があります。
母校でメジャーだったのは、雪の日の「ソリ代わり」です。
エンタメに飢えている高校生はみんな考えることが同じです。
業務用食洗機の扱いに異様に慣れている
これも学校によると思いますが、私の母校では学内の仕事当番があります。
みんなが一度は通る道が、食堂の食器洗い場。
ここでは業務用の食洗機が稼働していて、ラックへの食器の効率的な並べ方、予洗い、熱と蒸気への耐性など、いろいろ身につきます。
これが意外とのちのちのアルバイトにも生かされたので、なにごとも経験です。
親元離れて長いのに料理と掃除スキルは伸びない
これもボーディングスクールだと仕方がないのですが、
まったく料理しなくても3食揃います。
自室以外は、掃除スタッフか仕事当番の子が掃除してくれます。
そういう意味では、勉強や交流に集中できる素晴らしい環境です。
でも生活力は親元から4年離れていてもまったく磨かれません。
パッキング能力は異常に高い
でも長期休暇のごとに寮を離れるので、必要な身の回りのものを集めて荷造りする能力は異常に高まります。
これは卒業後も便利な能力のひとつです。
講話を聞きながら眠くないフリをするのが長けている
私の母校では月1回の全校集会でゲストスピーカーが1時間くらいの講演をすることがありました。
当時の南アフリカ大統領がこられたこともありますし、芸術分野やビジネス分野など様々な著名人が承知されていました。
でも全員が話し上手かというとそうでもない。
生徒としても、毎回聞くコンディションが整っているかというと、そうでもない。
まったく話に入り込めなくても、1時間を眠らずにやり過ごす方法は4年間で磨かれていきました。
そのあとの大学生活でもおおいに活用しました。
先生も知らない校内の抜け道を知っている
学校に1年も住んでいると「え、こことここがつながってるの」とか「こんなところにドアがついてたの」みたいな発見があります。
キャンパスや設備へのありがたみが薄れてくる
名門校ほど施設や設備にお金をかけています。だからキレイで豪華なのはある意味当然です。
でも毎日そこで寝起きしていると、そのありがたみが薄れてくるのも残念な事実。
毎日が晴れでアッパーな日ばかりではありません。
雨の日も冬の日も、期末試験日やエッセイの締切前日も、失恋した日もあります。
むしろなにかに追われている日のほうが多いんじゃないか?というくらい。
学校関係者にしかわからない業界用語が家族や他校生に通じなくて辛い
学内でしか通用しない略語とか、学外では違う意味で使っている用語とか、ありますよね。
私の母校ではSWISとかworkjobとかDL(ダウンロードではない)とか。
今でも同窓生同士でネタになる言葉です。
あとは建物やホールを固有名詞で呼ぶ場合。たとえば学生センターのことを母校ではTracyと呼んでいましたが、知らない人が聞いたら誰?ですね。
家族よりも友だちと離れるほうが落ち着かなくなる
ボーディングスクールに行ったら、ホームシックになるのは最初だけです。
1年も経つと長期休暇の帰省途中から、「そろそろ寮に戻りたい、なんだか家が窮屈」と感じる事象が発現します。
不思議ですよね。
親友はみな地球の裏側
私の友だちは地球の各所に散らばっていて、なかなか気軽に会えません。
SNSでゆるくつながっていても、こんなに離れていると共通の話題も見つけにくい。
でも、同窓会に行ってみて感じたのは、物理的に会うことさえできれば会話はできるということ。
そして、バックグランドを少しでも共有したことがある相手とは、そうじゃない人よりも話が通じやすいと感じます。
まとめ
いかがでしたか?
この記事では、ボーディングスクールに4年間通い、その後もボーディングスクールへ訪問を続けていて、最近またボーディングスクールで宿泊したばかりの私が「ボーディングスクール出身あるある」を思いつく限り書き出してみました。
- ボーディングスクール出身と言うと「え、金持ち?」と聞かれる
- 平日の予定は朝7:30-夜22時までほぼ固定
- 夜も学校にいる
- 週末も学校にいる
- 外出のたびに「チェックアウト」しないといけない
- 通学生に学校を連れ出してもらう
- 門限に慣れている
- 消灯後に布団をかぶって内職
- 夜中の消防訓練で起こされたことがある、何度も
- 周りが騒がしくても集中できてしまう
- 退学させられた知り合いがいる
- ドラッグをやっている知り合いがいる
- 聞きたくもないウワサ話を聞かされる
- 音楽の個別練習室を本来の目的以外で利用したことがある
- トイレの音をやり過ごすテクニックがある
- プライバシーの概念が人からずれている
- 先生の家でくつろいだことがある
- 先生の家の洗濯機を借りたことがある、何度も
- 洗濯の頻度が週1でも気にならない
- 服のローテーションが週間制になる
- スウェットとビーサンがお友だち
- ビュッフェでの食事ハック
- 食堂のトレイの活用法を2つ以上知っている
- 業務用食洗機の扱いに異様に慣れている
- 親元離れて長いのに料理と掃除スキルは伸びない
- パッキング能力は異常に高い
- 講話を聞きながら眠くないフリをするのが長けている
- 先生も知らない校内の抜け道を知っている
- キャンパスや設備へのありがたみが薄れてくる
- 学校関係者にしかわからない業界用語が家族や他校生に通じなくて辛い
- 家族よりも友だちと離れるほうが落ち着かなくなる
- 親友はみな地球の裏側
なかにはボーディングスクールに限ったことじゃないものもありますが、出身生であれば高確率で当てはまることばかりだと思います。
ほかにもいろいろボーディングスクールの記事を書いています。よかったら読んでみてね。
まずはアメリカのボーディングスクールや私立校で行われている教育について知りたい方向けの本。
タイトルには「エリート教育」とありますが、実際に体験した私の持論では必ずしもエリートを育てる教育ではありません。
イギリスの寄宿校(パブリックスクール)についてはこちらなど。