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海外私立校受験における保護者エッセイ心得

インターナショナルスクール
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萩原麻友(ハギワラマユ)のブログへのご訪問ありがとうございます。

このブログでは、子育てや教育や進路に関する情報を発信しています。

この記事ではこんなことを解説しています
  • 保護者エッセイとは「声明文」
  • 実際に聞かれていること
  • やってはいけないこと
  • 書くときのステップ
  • 書くときに頼れる便利なツール

これから海外の私立校(または国内インター)を受験をする保護者の方、また受験をサポートされている方に参考にしてもらいたいと思い、この記事を書きました。

保護者エッセイがない学校でも、学校の方と保護者が交流する場面はあると思います。

たとえば学校の面接や訪問時の雑談、入学後の保護者面談など。

そういった場でも、この記事の内容は話題として効力を発揮します。ぜひお役立てください。

まだ受験の予定がない方も、こういう内容をいずれ問われるということがわかっていれば、普段の子育てや教育判断に反映させることもできます。

取り入れられそうな点は取り入れ、ご自身でも仮説を立てて取り組んでみてください。

注意

この記事に書いてあることは当時の(書いた時点の)情報ですし、私の主観も混じっています。
なかにはケースバイケースのこともありますし、古くなっている情報もあります。
入学・申し込みをするときはどんな情報も鵜呑みにせずにきちんと自分のケースに即しながら幅広く調べましょう。

保護者エッセイとは

海外校受験で課されることが珍しくない保護者エッセイ(Parent Statement)とは、学校が家庭や子どものことをもっと詳しく知るための材料です。

私は「エッセイ」と訳していますが、いわゆるエッセイ集のエッセイではありません。卒業アルバムの文集ではないということです。

原語ではStatement。つまり、声明文や陳述文、主張文です。

主張文というと、まるでディベートっぽいでしょうか。

でも実際に、そうなんです。保護者エッセイは、相手を説得するための主張文です。

学校側は保護者エッセイを含む出願書類を全部見渡して、「当校はこの生徒の成長に貢献できるのか」を判断します。

保護者は、学校がこの問いに自信を持ってYESと言えるような説得材料を提供するのです。

ですので、適当に書けばいいものでもないし、想いが空回りするのも避けたいです。

なるべく抜けもれなく正確に伝えることが、何よりも大事な子どもの成長と幸福感につながります

意義とポイントをよく理解して取り掛かりましょう。

保護者エッセイがある理由
  • 学校は出願者のことを全方位からよく知りたい。保護者エッセイは欠かせないパーツ。
  • 試験や成績や学校の推薦状だけではわからない子どもの側面がある
  • 子どものことを一番知っているのは保護者だから、保護者の意見を聞きたい
  • 学校から見た保護者が、子どもを育てるパートナーとして合うかどうか確かめたい

保護者エッセイひとつで合否が決まらないでしょ、と軽く見られがちですが、

生徒の足を引っ張るのも後押しをするのも、保護者エッセイ次第です。

せめて子どもの挑戦の足を引っ張らないようにしませんか?

保護者エッセイ(Parent Statement)の課題文

2022年度の受験(2023年入学)にアメリカの私立校受験で実際に課された保護者エッセイの課題文です。

毎年、似たようなことが聞かれています。

Please select the category you think most reflects the level of skill when thinking about your child today. 

現在のお子さまについて、最も正確に反映していると思われる項目を次からお選びください。

発揮している発展途上芽生えている判断材料がない
主体性
知的探究
柔軟性
レジリエンス
自律心
社会意識
チームワーク

What are your hopes for your children in their school experience?

お子さまの学校生活に望むことは何ですか?

Describe an experience that posed a significant challenge for your child. How did your child respond to that challenge?

お子さまにとって大きな課題となった経験を記述してください。お子さまはその課題にどのように対応しましたか?

Has your child been subject to disciplinary action by school (including but not limited to withdrawal from school, probation, or suspension)? Is there anything specific about the sequence of your child’s schooling that you’d like to share? For e.g. skipped or repeated a year.

お子さまは学校からなんらかの処分(退学、謹慎、停学を含むがこれに限らない)を受けたことがありますか?お子さまの学校生活の経緯について、何か知っておくべきことはありますか?例:飛び級や留年など。

保護者エッセイ(Parent Statement)で実際に聞かれていること

例題は、どんな回答にも対応できるように結構ぼんやりしています。

だからといって、回答までつられてピンボケしていてはもったいないです。

どんな例題であっても、学校に伝えるべきことは決まっています。

学校に伝えるべきこと
  • 子どもの独自性
  • 子どもがこれまで遭遇した課題
  • 志望理由
  • 保護者目線のコンテキスト

成績だけで合否を出さない学校には、「優秀」な子を上から順に取ろうとしない明確な意思があります。

むしろ色とりどりの魅力的なパレットを作りたがっています。

つまり、我が子がいかに学校のパレットに色を加えられるか、学校を説得する必要があります。

何度強調してもしきれない基本は、こちら。

保護者エッセイの基本
  • 具体的な事例やエピソードを差し込んで、思い描けるように語る
  • 習慣や、思考と行動のクセを具体的に伝える(特に非認知能力的な長所をしっかり述べる)
  • もし素行や学習面で問題があった場合は、隠さずに補足する。いかに成長体験になったのか、真摯に前向きな話をする。

「個性を出さなきゃ」と、奇をてらう必要はありません。

重要なのは、以下のような内容を、正直に個別具体的なエビデンスとして積み重ねることです。

子どもの独自性

人にはそれぞれ、個性があります。それを示すために、こういうことを組み合わせます。

  • 長所と短所
  • 人格や性格や気質
  • 興味や関心
  • モチベーションの源泉
  • 勉強スタイル

実際に子どもに会ったことがなくても、想像ができるような描写が理想的です。

これまで遭遇した課題

ひとつ、過去1~2年で象徴的だったものを選んで詳述します。

失敗でもいいし、達成できた高い目標でもいいし、環境的な困難でもいいです。

どんなきっかけで遭遇して、どう考えて、どう感じて、どう行動したのか。

読者が疑似体験できるほど具体的に、でも読み切れるほど簡潔に書くのが大変難しい。

書きやすいネタを選ぶのも手です。

志望理由

なぜ当校を志望しているのか、なぜ地元の学校じゃだめなのか。(世界的には日本の教育はまだ評価が高いです。)

日本の中だけにいると「海外留学=意識が高いひとにとって当然の選択肢」かもしれませんが、まだまだ海外からすると「日本では自国の教育レベルが高いからなかなか来てくれない」国です。

そんなイメージの集団からあえて飛び出して海外で学びたいというのはどういうわけ?しかもなぜうち?と学校さんは単純に興味津々です。

じっくりと答えて差し上げましょう。

保護者目線のコンテキスト(背景)

海外受験では「これくらい書かなくてもわかるでしょ」なんてことが一切通用しないのが、鉄則です。

学校の担当者さんは、日々に本当にいろんな立場、価値観、習慣の人々の相手をしているので、「書かなきゃ伝わらない。書いても解釈違いが当たり前の世界です。

だからこそ、これでもかと日常から描写してあげることで、ほかの出願書類をより正しく解釈するための文脈を添えられるのが、保護者エッセイです。

たとえば、こういうことです。

  • どんな日常を過ごしているのか(一日や一週間の流れや、学校・塾・部活・習い事などの割合など)
  • どういう環境や地域の関わり合いのなかで育ってきたか(核家族、祖父母同居、兄弟、都会・地方、地域活動など)
  • どんな教育を受けてきたか(少人数、集団一斉型、私立・公立、転校が多かった、など)
  • どんなふうに友達と付き合っているか
  • どんな育児方針・教育目標を掲げているか
  • 日本の学校に通っているひとは、どう英語教育を工夫して頑張ってきたか

全部を含める必要はありません。ここだけは外せないというポイントに絞って、打ち出しましょう。

学習や行動、精神面の特性、持病や医療的な伝達事項

なにか学習上や生活上の懸念があれば、その対応策も含めて具体的に明記します。

保護者エッセイ(Parent Statement)でやってはいけないこと

子どもも保護者も、完璧な存在はありえません。

だから完璧を装うのは、見栄っ張りや嘘つきと思われて逆効果です。

子どもの育ったコンテキストと子どもの要素がわかれば、あとは学校が合うかどうかを判断します。

成績だけで合否が決まらないタイプの受験は「お見合い」に例えられることがよくあります。

せめて、こんな文章を書く保護者とならどんな困難も前向きに一緒に取り組んでくれそう、いい信頼関係が築けそうだと学校に思ってもらいたい。

欠点を隠さず、飾らない文章であるほど、そう思ってもらいやすいです。

ここでは、その逆となるNG集を集めてみました。

「貴校の○○や○○、○○といった点に共感しました」

気づいたら学校のことを語っていませんか?

学校のことは学校が一番よく知っています。

逆に相手が知りたいのは生徒のこと。

限りある尺ですので、たとえば「我が子の○○や○○、○○といった点を活かしてくれるのが貴校だと思いました」など、あくまで子どもを主体に。

「貴国は○○だから、△△な教育や経験を得られる」

気づいたら相手国を持ち上げ(日本を下げ)ていませんか?

これもやりがちですが、結構危うい戦略だと私は思います。

先方からしたら「主語大きすぎない?どこまで実態を知ってるの?」と興ざめする可能性も。

現実と離れたイメージで語ってしまうリスクがあるので、あくまでも事実として知っている(つまり我が子の)ことに集中するのがベストです。

そもそも限りある字数を、子ども以外のことに費やすのはもったいないです。

「子どもが○○、○○、○○を受賞」

履歴書のように、子どもの実績を羅列して終わっていませんか?

せっかくの自由記述でこれはもったいない!

下手すると、表面的な誇張や自慢に取られてしまいます。

せっかく素敵な実績があるのなら、そのうちの一つだけでいいので、もっと踏み込んでください。

なにがきっかけで、いつからその分野に興味があって、どんなハードルがあって、でもどのように上達して、どんな気質を発揮して結果にいたって、どう感じたか。

そうすると、たとえ「必ず給食を一番に食べ終わる」みたいな実績であっても、輝かせることができます。いやほんと。

子どもの欠点を隠す

欠点を隠してしまうことの最大のデメリットは、不合格ではありません。

本来なら伸ばしたり補ったりできたかもしれない子どもの領域がケアされないまま見過ごされてしまうことです。

どんな欠点も、どう発覚して、これまでにどんな対策をしてきたかも率直に伝達して、その点どのようなサポートが期待できるのかを学校(教育のプロ)に判断してもらうのが、結果的には子どものためになります。

仮説でもいいので、どういう場面でその欠点が影響を及ぼすのかについて考察を述べるのもありです。

長々と書いてしまう

ブログもメールもニュースレターも長くなりがちな私が言えたことではありませんが(笑)

アドミッションはたくさんの願書を読まないといけないので、技巧に富んだ文章や込み入った論文よりも、一文一文を短く、段落構成も簡潔でわかりやすい文章を心がけましょう。

理想とするイメージは、徹夜明けの頭で読んでもわかるくらいの明瞭さ。

謙虚がすぎる

出願は就職と同じく、自己PRしてなんぼの世界です。

自己PRの作法になれていないと、無意識に控えめになりがちです。そこは親ばか全開で行きましょう

短所も実は長所に捉えられることがあるので、子どものことを柔軟に見つめ直してみてください。

とはいえ、いいことばかり書いても信頼されません。

ポジティブ9に対して致命的ではないネガティブを1混ぜるくらいだと真摯に感じられるのではないでしょうか。(主観です)

保護者のエゴの香りがする

基本は正直であるほうがいいのですが、子どもが望んでいない留学・受験を無理やりさせているようなニュアンスに取られないように注意しましょう。

本人がそこまで乗り気じゃなかったとしても、なぜ子どもにとって環境の変化が望ましいと考えているか、ニュアンスに気をつけながら書きます。

保護者エッセイ(Parent Statement)を書くステップ

そろそろ「保護者エッセイって難しそう、無理」と思われている頃だと思います。

大丈夫。ちゃんと時間と余裕を持って、正しく取り組めば誰でも書けます。

保護者エッセイの書き方に正解はありませんが、王道はこれです。

早めに始める、  以上。

締め切り間近はほかの書類の最終チェックに追われるので、せめて保護者担当部分は早めに終わらせましょう。

締め切りの1ヶ月前には書き終えているのが理想的です。

そのうえで、以下のようなステップをたどると満足の行くエッセイに近づけると思います。

締め切りの半年前から

  1. 相手を知る:学校のことを調べて、どんな価値観を持っている集団なのか仮説を立てる。どういったところが子どもに合うのだろうか。なぜ我が子は、他の選択肢ではなくこの選択肢を取る必要があるのだろうか。第三者が聞いて納得できる内容だろうか。
  2. ブレインストーミング①:学校に知ってもらいたい子どもの要素ってなんだろう?学校は、子どものどんなことが知りたいだろう?過去の成績表や先生のコメントなどを振り返るのも有効です。
  3. ネットでサンプルエッセイを拾って読む:各エピソードの深さや、文量の配分やトーンやペースを確認する。
  4. ブレインストーミング②:2で挙げた子どもの要素について、どんなエピソードがあるだろうか?この段階では、ネタはあればあるほどいいです。

締め切りの2ヶ月前

  1. 課題文をよく読む:質問に答えるための道筋を考える。字数制限を把握して、ネタの取捨選択をする。
  2. 下書きを書く:文章をつくる。
  3. 下書きを寝かせる:いきなり完成させないのがポイントです。

締め切りの1ヶ月半前

  1. 下書きを推敲する:忘れた頃に読み直す。確認すべきは、「この文章は、我が子以外にも当てはまるだろうか?」もし当てはまるなら、個別具体性が足りない証拠なので文章にもっと肉付けを。
  2. 誰かに読んでもらう:信頼できる第3者にフィードバックをもらってみる。
  3. 文法や表現、ファクトチェックをする:内容が固まってから、最後でいいです。

締め切り1ヶ月前

校了。他の書類が揃い次第、いつでも提出できる状態にしておきましょう。

文才は問われません。子どもを一番良く知る保護者として、時間をとって子どもを分析して文章に乗せる。このコミットができているかどうかが最低でも問われています。

保護者エッセイを書くときに便利なツール

最後に、私がエッセイをチェックするときに常用している便利ツールを3つ紹介します。学校に問い合わせメールをするときにも使えます。

利用には注意点があります。

この3つは便利ですが、「完璧な文法や言い回し」よりも大事なのは上記に挙げたようなことです。

保護者エッセイについては多少ぎこちなくても、大事な部分が正確にかけていれば、大丈夫です。

「ネイティブっぽく書けた」かどうかよりも保護者にしか出せない情報を出し切れたか、を重視してください。

文法チェックに

日→英、英→日翻訳に

上級者向け

こちらは英語を正確に理解できるひとにはめちゃくちゃ便利なツールですが、使いこなせない人は間違ったニュアンスでそのまま行ってしまう危険もあります。

なるべく第三者の文章チェックと併用することをおすすめします。

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まとめ

ここまで、私が考える保護者エッセイの心得とお作法について書いてみました。

海外の私立校受験は日本の受験とは感覚的に異なることも多いので戸惑う方も多いと思います。

私自身、ここまで言語化できるまでは時間がかかりました。

今後受験をされる方の参考になれば幸いです。

冒頭で私は、保護者エッセイとは主張文であると書きましたが、

究極の主張文はラブレターだと思います。

保護者エッセイも、子どもへの想いをしたためたラブレターです。

普段から観察してきた積み重ねがものをいいます。保護者にしかわからない子どもの素敵なところが伝わるといいですね。

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