萩原麻友(ハギワラマユ)のブログへのご訪問ありがとうございます。
このブログでは、子育てや教育や進路に関する情報を発信しています。
今回の記事は、読者さんからのご質問を発端にまとめました。
- 保護者のマインドのアップデート
- 中学生におすすめの英語学習方法は、「安・近・短x量」
- 英語学習へのモチベーションの上げ方
- 英語学習を習慣化させるコツ
この記事は、おもに「いま中学生だけど、これまで学校でやる以上の英語学習をしてこなかった」方向けの「英語学習の始め方」の記事となっています。
学校の外で英語学習をすでにしてきている方は、現在の英語力をCEFRで確認し、目標との差を確認したうえで学習計画を立てましょう。
参考:小学生英語のうちから意識しておきたいCEFR対照表【幼児・中学・高校生も】
中学生にはどんな英語の勉強法があるのか
この質問をくださったのは、現在日本の公立中学に通われているお子さまの保護者さんでした。
ご質問の要点をまとめると、
- 子どもは消極的な性格
- ただ、子ども自身はいまのところ海外への興味はない
- 保護者としては将来のことを考えて英語を勉強させたい
- でもなにから始めたらいいのかわからない
という内容です。
今回のご質問には2つのポイントがあります。
1つ目は、「どうやって中学生に海外や英語に興味をもたせるのか」。
2つ目は、「学校以外で英語を勉強するときにどんな方法があるのか」。
この2つです。
まずはご質問者さんに対する私の一次的な回答をご紹介した上で、ひとつずつ考えをまとめます。
私の一次的な回答
このご質問者さんとオンラインでお話をする機会がありましたので、文章ではなく口頭で、このようなことを述べました。
- 「本人に向いている」英語学習の方法を探る
- 最低でも英語嫌いにさせない
言葉にするとシンプルですね。
では具体的にどういうことか、順を追って解説していきます。
ちなみに、この記事を書いてから読んだ加藤紀子さんの新著「海外の大学に進学した人たちはどう英語を学んだのか」には、この記事で書いたことがほとんど載っているのと、それ以上に読みやすく事例も豊富に載っています。おすすめ。
まずは保護者自身のアップデート
現代の日本の子どもたちがどういう状況にあって、学校での英語教科、そして学校外で英語を学ぶことにどういう意味があるのか。
ここを掘り下げると長くなるので、以前に記事にしました。
仮説でもいいので、子どもの教育と英語についての意見を持つには、保護者自身の認識のアップデートが必要です。
たとえば、こういうことに自分なりの解答を持っておくということです。
- 学校以外の英語学習は必要なのか?
- 学校以外の英語学習で何を目指す?
- ベストな英語学習法はあるのか?
子どもの英語学習について情報収集したり意思決定をしていくなかで、非常に重要なポイントです。
以下には私の考え方を述べますが、正解はありません。
この記事の最後には、参考図書も載せますのでぜひ考えてみてください。
学校以外の英語学習は必要なのか?
過去の記事でも取り上げましたが、ある調査によると、小中学生の「保護者の 7 割近くが、学校の英語授業に関して不安に思っている」そうです。
同時に、保護者には「英語に関して子どもにどのようになってほしいかについては「志望校合格」「英語資格取得」以外にはっきりとしたイメージがない」ということもわかっています。
英語学習の目的やゴールイメージは家庭や子どもごとに違うものだとは思いますが
それにしても「うちではこういうゴールを掲げて、逆算して今はこうする」という方針を決められない方が多いようです。
日本の学校教育ではそこまで一緒に考えてはくれませんから、各家庭や個人で決めていくものです。
そもそも、学校以外で英語をしないという選択肢もありです。
順当に行けば、中卒までにはCEFRでA1、高卒までにはA2まで達成できます。
進路によってはそれでも充分です。
うちの子にとって英語は本当に必要なのか。
それとも周りが必要な雰囲気を出しているからそう感じているのか。
一度立ち止まって、考えてみてください。
学校以外の英語学習で何を目指す?
仮に「学校以外でも英語学習をやったほうがよさそうだ」と思ったのであれば、英語学習のゴールイメージは持っておいたほうがいいです。
たとえばもし「留学」がひとつの目標だとしたら、留学したい年齢によって目標とする英語レベルを決めることができます。
大学以降で留学したければ、高3春くらいまでに最低でもCEFR B1、良くてB2があれば選択肢はあります。
もっと早くから、たとえば中高で留学したい場合は、A2~B1あれば選択肢があります。
だいたいのレベル感がわかれば、ゴールイメージの解像度があがります。
解像度があがれば、やるべきことも見えやすくなります。
すると外部の情報にも惑わされにくく、不安も感じにくくなります。
ぶれない英語学習のためにも、ぜひこちらの記事を参考にしてみてください。
ベストな英語学習法はあるのか?
自然に英語が身につく方法があるのでしょうか?
努力なしで英語が身につく方法があるのでしょうか?
英語圏に留学したら英語が自然と身につくのでしょうか?
英語学習の近道はあるのでしょうか?
ーー残念ながら、答えはすべてNOです。
その人に合った、そのときに一番続けやすい方法で学習を続ける。これしかありません。
裏を返すと、日本にいながらでも、効果的に学習を続けられれば英語はできるようになります。
最低でも死守したいのはこれ
私が個人的にも守っておきたいことです。
英語学習に限ったことではありません。
- モチベーションが伴わないとなにごとも続かない。
- 親子関係を犠牲にしない。強制してもいいことはありません。
- 子離れを意識する。
中学生といえども、自立が始まっています。子どもが自分で決断して、自分の責任をとる練習をサポートしましょう。 - 「英語がない人生もマル」と親自身が開き直る。
英語は、幸せや成功の絶対条件ではありません。英語以外の突破口を探す手伝いも、保護者ができることです。
保護者としてのスタンスはこちらの記事でも書いています。
中学生におすすめの英語学習方法
やっぱり前説が長くなってしまいました。
ここから先はようやく、小学校高学年~中学生を意識した英語の学習方法をご紹介します。
なるべくモチベーションを保ちつつ、学習者本人に合う学習方法を見つけるためのアイディア集です。
学校以外でやる英語では、お金のほかに時間もかかってきます。
そのお金や時間があったら他のこともできたのに、と未練や不満や課題は出てくるでしょう。
せっかく貴重なお金や時間や機会損失をかけるのであれば、とにかく子どもに合った方法を探すのが吉です。
私がおすすめするのは、「安・近・短」で量をこなす学習法です。早速見ていきましょう。
英語学習へのモチベーションの上げ方
まずはモチベーションから。
英語学習は楽しく継続することが大切ですが、まずは最初のやる気がないと始まりません。
ポイントは、「やらせようとするあまり」英語嫌いにさせないこと。
そして日常に取り入れるハードルをできる限り下げること。
そのためには、以下の4点に気をつけるといいと思います。
- 子どもが関心を持てる教材・素材を与える
- 机での勉強を強制しない(英語はソファやベッドでも学べる)
- 紙での勉強を強制しない(デジタルデバイスは優秀な学習ツール)
- 趣味・関心をベースにした英語体験を勧めてみる
いかに「勉強」と思わせずに取り入れてもらえるか。
いかに英語は楽しく学べると認識してもらえるか。
ついでに、損得勘定で動けるタイプの子であれば、英語ができることでこんなメリットもあると伝えてもいいかもしれません。
英語ができると。。。
- お金(奨学金)がもらえる確率アップ
- 推しの〇〇さんと交流できるかもよ
- 旅行がもっと楽しめるよ(困ったときに人に聞きやすいよ)
みたいな感じです。
子どもだけのモチベーションの源泉、やる気スイッチを刺激してあげましょう。
伸ばしたい分野に適した英語学習方法
語学学習は、よく4つの技能で語られます。
リーディング、リスニング、スピーキング、ライティングのことです。
これらの技能は互いに影響しあっていますが、学習の順番としてはリスニングとリーディングが基礎となり、スピーキングとライティングがその後に続くことが一般的です。
つまりインプットが先、アウトプットが後ですね。
ただし、個人差がありますので、自分に合った順番を見つけることが大切です。
ここに挙げている方法は、本人に「ちょっとやってみようかな」くらいのモチベーションがある前提で紹介しています。
「嫌々やらされている」状態の子には、1つ前の節を参考にモチベーションを上げてから戻ってきてください。
すでに英語学習をしている方は、現在の英語力をCEFRで確認し、目標との差を確認したうえで学習計画を立てましょう。
参考:小学生英語のうちから意識しておきたいCEFR対照表【幼児・中学・高校生も】
インプットをするなら
基本的なことですが、リスニングとリーディングの基礎力をつけるためには、英語の音声や文章を聴いたり読んだりすることが重要です。
まずは簡単なテキストや音声から始めて、徐々にレベルを上げていきます。
- 初級:英検のリスニング問題の練習をまずは5級から。TOEFL Primary®のリスニング問題もいいかも。
- 感覚を掴めたら:NHKの中学生の基礎英語
- 慣れてきたら、好きな映画、アニメ、ドラマ、動画、ニュースやラジオなど
下手に教材を買う前に公式サイトを見ると音源もテキスト(問題と原稿)も載っています↓
TOEFL Primary®のサンプルリスニング問題も公式サイトにあります↓
NHKの『中学生の基礎英語』は、めっちゃよくできています。
↑注意点は、音源の無料オンデマンド配信は60日間がすぎると聞けなくなること。もし逃してしまったら、NHKのサイトからアーカイブ購入できます。
リーディングについては、音読(量)→→→精読(質)の順でやっていきます。
- 初級:英検のリスニング問題の原稿を音源と一緒に音読(または短く区切ってリピーティング)してみる。まずは5級から。
- 感覚を掴めたら:学校の教科書、NHKの中学生の基礎英語
- 慣れてきたら:語学学習者向けの洋書、子ども向けニュース、ブログ、雑誌、好きな映像コンテンツの字幕など
- 文法をいれるなら:学校の教科書、英検の参考書など
- ボキャブラリを増やすなら:英語学習アプリや単語帳など
単語や文法力は、リーディングやリスニングを通して用法とともに身についていきます。
さきに単語や文法を単独でやっても、使われている場面に遭遇していなければ効果も薄いので私はあとづけで良いと思います。
また、ボキャブラリや文法の勉強は学校でもやるので、自宅学習ではとにかく自分にあったリスニング・リーディング用のコンテンツと多く出会えるように探し続けましょう。
プラスアルファでやるとしたら、フォニックスかもしれません。
たとえば「Phonics ESL」で検索をかけると、関連の動画やワークシートが出てきます。
リーディングの本選びはこちらもご参考に。
鉄板はこちら。
これ一冊で入門からハリーポッターレベルまで網羅できます。
普段利用するガイドは一冊に厳選したい方向け。
ほかにもあります。
こちらは絵本や児童書から大人向けの本まで幅広いです。「読めるようになる」の見通しがつけやすく、その先の世界を想像してワクワクします。
英文の難易度を数値化できるLexile指数について、詳しく記事にしました↓
アウトプットをするなら
リスニングとリーディングに慣れてきたら、アウトプットです。
スピーキングとライティングのどちらか優先するとしたら、本人の得意分野を選びます。
ライティングはスピーキングの練習になるし、
スピーキングもライティングの練習になります。
人によっては書くよりも口に出したほうが早い場合もあるので、「書く」ことにこだわらなくてもいいと思っています。
簡単な文章から始めて、徐々にレベルを上げていきましょう。
- 初級:英語学習のアプリ(Duolingoなど)で感覚的に語順を選んで文章を組み立てるところからスタート
- 感覚を掴めたら:学校のワークや英作文の問題集を使って、短い定型文をたくさん作るトレーニング
- 慣れてきたら:オンラインレッスン、英語塾、海外旅行や短期留学など
段階が上がれば、英語でのコミュニケーション作法やエッセイの書き方などを学ぶことになります。
短い文章をたくさん作るトレーニングにはこちら↓
アウトプット力の向上には、フィードバック、つまり相手の存在が不可欠です。
初期の段階では壁打ちでよくても、その段階を早期に卒業することを目指して取り組みましょう。
これは英語塾やオンライン英会話、そして留学など、実践的な現場で学んでいくと効果的です。
子どもに向いている学習方法
ここまでは伸ばしたい技能ごとの英語学習法を紹介しましたが、
そもそもひとには個性や学習上の特性があり、向いている学習法は異なります。
向いている学習スタイルに合わせる
子どもに合ったスタイルで学習することで、より効果的に進められます。
たとえば、
- 視覚的・聴覚的・体感的など、より吸収しやすい方法
- 一人でコツコツ OR お友だちとワイワイなど、学びやすい方法
この2つだけでも子どもにとっては大きな違いです。
こちらも参考にしてみてください。
興味関心に合わせる
誰しもそうだと思いますが、少しでも興味のある分野に重なっている手段のほうが取り組みやすいです。
たとえば音楽が好きな人は英語の歌詞を読むことや、音楽関連の英語コンテンツを利用することで、学習を楽しみながら進めることができます。
インターネットと検索の力を使えば、より向いている教材や素材に出会えます。
検索するときは「(興味関心分野) ESL 」で始めます。
たとえば、野球が好きなら「baseball ESL」で検索します。
そうすると私の検索画面では最初に野球関連の英語のワークシートが出てきました。
子どもの「好きなもの」の見つけ方や、無料教材の探し方は以下の記事もご参考に。
英語学習を習慣化させるコツ
なにかを継続するのは、大人でも難しいことです。
どんなに興味のあることでも、毎日コンスタントにやりなさい、と言われたら「え~」ってなる瞬間も出てきます。
でも、習慣の力は見過ごせないし、使いこなせるとほかの分野にも役立ちます。
「習慣術」で検索するとヒントがたくさん出てきますが、一部ご紹介します。
- 小分けにする:一度に長時間集中するよりも、毎日少しずつ英語に触れる習慣をつけることが大切。そのためには、取り掛かるハードルは極限まで下げます。どれくらい下げるかというとたとえば「英文を一行だけ音読する」レベルです。
- 「ながら」にする:移動中やトイレ中や歯磨き中など、動きが制限されているときと行動をセットできると、習慣化しやすいです。
- 見える化する:やったことをどこかに残します。カレンダーに印でも、シールでも、ハンコでも、日記でもいいです。ラジオ体操の参加カードみたいなものです。
どんなにいい教材や学習法であっても、習慣にできていないと効果が見えにくいです。
習慣の力を味方につけて損はありません。
無視できない母国語(日本語)の役割
さて、ついつい英語ばかりに目が向きがちですが、中学生以上の英語学習においては母国語である日本語での思考力も欠かせません。
先に母国語を習得してから、その知識をつかって外国語を学んだほうが「トータルでかかる時間や労力は少ない」という有力な説もあります。(個人差あります)
日本語での前提知識や思考力があるからこそ、英語の文法や構造、語彙力をより理解することができ、英語の読解力やライティング力にもつながるといえます。
- 文章を読む:母国語であっても、文章の構造や表現方法、語彙力などの向上は外国語の理解にもつながります。また、いろんなジャンルや書き手の文章にふれることで、広い知識や情報を得て、英語学習のとっかかりが増えることも期待できます。
- 文章をつくる:学校の課題だけでなく、日記やブログ、SNSでもいいので考えをまとめたり文章を構成する力を磨くことができます。紙にこだわらず、音声入力でもいいです。
- 人と話す:クラスメートや友達、家族や親戚など、立場の違うひとと話すことで、意見を伝えるための表現方法やマナーを磨けます。
- 人の話を聞く:いろんな意見にふれること、そして表現方法にふれることで、自然で幅広い話し方や語彙を学べます。
母国語力を伸ばすことは英語力を伸ばすためにも大切であること、忘れないでください。
こちらもご参考に。
まとめ
長々と書きましたが、肝心の「英語学習法」についてはなにも奇抜なことは書いていません。
英語学習で一番難しいのは、初動を起こすモチベーションと習慣化です。
次に難しいのは、子どもの学習者としての特性を理解、そして子どもの興味関心と併せて教材や素材を選ぶことです。
逆にいうと、この2つをおさえれば英語に限らず学習はうまくいきます。
ただ、そこも含めて一生懸命やったけど、希望する目標に到達しなかった・目的を達成できなかったパターンもあると思います。
それであっても、英語学習という経験を通して以下のような学びや実績が残れば成功だと思います。
- 力を磨く努力と工夫を重ねること
- 世の中に好奇心を持ち、自分の考えを深めること
- 自己管理、タイムマネジメント、習慣化の工夫を重ねること
- 知らないことを知る楽しさ
- 失敗してもいいから、続ける・やってみること
英語学習といいつつも、ここで学んでいるのは、人生をより良く、より豊かにしていくための手段です。
目の前の子供にとって本当に英語学習が必要かどうか、どのような勉強法が向いているかを考え、試しては改善を繰り返しましょう。
今からできることをコツコツ重ねていく。
子どもをよく観察して、子どもに向いている進路の情報収集を怠らない。
仮説を立てて、試してみる。
子どもに「そんな調子だといつまで経ってもできないよ」とかいいたくなる瞬間も、きっとあると思います。
でも、中学生以降の子どもにはどんどん自分でものごとを決めさせる。
大人の保護下にいる間に何回失敗して起き上がれるか、が勝負です。
子どもの英語学習を見守る保護者のスタンスとしては「なにかにつながればラッキー」くらいでいいのではないでしょうか。
参考図書
いまの保護者世代は英語を「勉強」してきた方が多いと感じます。
でもこれからの英語学習は、勉強するものというよりも日常に混ぜ込むもの、という感覚が近いのではないでしょうか。
保護者世代の英語学習に対する認識をアップデートするための参考書をおいておきます。
こちらは古い本ですが、今読んでも的を得ていると思います。
日本でいわれがちな英語教育の理想や幻想や迷信や都市伝説まじりのものを斬っています。
ちょっと異色ですが、こちらも。英語学習で目指すゴールの照準を合わせやすくなるかもしれません。