突然ですが、あなたは子どもの特性をどの程度把握していますか?
特性?うちの子は「平凡で普通」ですけど、と思われるかもしれません。
そんなことはありません。
どんなに「平凡で普通」であっても、特性はあります。見つけ方や言葉で表す方法を知らないだけです。
では、子どもの「特性」とはどんなもので、どうして「特性」を知る必要があるのでしょうか。
以前、私は「子どもの好きなもの」の見つけ方について記事を書きました。
今回の「子どもの特性」に関する記事は、その対となるものです。
「好きなもの」と同様、「特性」はその持ち主の大切な個性の一部です。
「好きなもの」や「特性」だけで子どもの存在のすべてを語れるわけではないけれど、それ抜きにしてその子を語れないような部分です。
それを知っているのと知らないのとでは、差があります。
子どもの「好きなもの」と「特性」をセットで知ることは、子どもの個性を理解する近道になります。
子どもの個性を理解する姿勢は、それだけで子どもは親に関心を持ってもらえている、見てもらえていると感じます。
そして親も外野の情報に流されにくくなり、親としての自信がつきます。
この記事を読んで、実践してみて、子どもの「特性」当ての名人を目指しましょう。
「好きなもの」と「特性」はどう違う?
「子どもの好きなもの」の見つけ方の記事で、私は「好きなもの」をこう定義しました。
好きなものとは、時間を忘れて熱中してしまうモノやコトです。
お気に入りや情熱、パッションやマイブーム、宝物と言い換えることもできます。
それは目に見えるモノでも、動きを伴う活動でも、場所でもいいし、ジャンルや分野でもいいです。
子どもがそれを目の前にすると、興味や好奇心を抑えられなくって、「もっと」「なんで」「どうして」「どうすれば」が自然と湧いてきて、それに応えたくてたまらなくなるような対象が「好きなもの」です。
特性とは
ではこの記事で取り上げる「特性」とはなんのことでしょうか。
「特性」とは、頭・心・体の無意識なクセです。
無意識に発揮される頭・心・体のクセ
「好きなもの」は比較的イメージしやすいので、「特性」との違いを挙げてみます。
「好きなもの」は本人の興味や好奇心を掻き立てる。
「特性」は無意識に自然と選んでいる言動や思考。
「好きなもの」は変わることがある。
「特性」はあまり変わらず、ずっとそこにある。
「黙々と」や「せっせと」や「またやってる」という言葉が合うのが「好きなもの」。
「さらっとこなす」「さりげなく」「いつの間にか」という言葉が合うのが「特性」。
「好きなもの」は、追い求めるもの。
「特性」は、発揮されるもの。
この記事で「特性」と呼ぶものは、他にもこういう言葉で語られることがあります。
- 無意識にやってしまう思考/感情/行動のパターン
- できて当たり前なこと
- 得意なこと
- 適性
- 習性
- 特質
- 性質
- 才能
- 強み
- クセ
- 習慣
- 傾向
これらを全部ひっくるめて、ここでは「特性」と呼ぶことにします。
「特性」は、本人が意識せずともできることです。
モノや程度によっては「才能」「スキル」「能力」「強み」と認識されることもあります。
まず思いつく例は芸術やスポーツや勉強の才能などではないでしょうか。
これらに関連した「才能」や「能力」や「強み」には、望ましくてポジティブなニュアンスが伴います。これもたしかに特性ですが、ほんの一部です。
この記事でいう「特性」には、ポジティブもネガティブもありません。
無意識に発揮される頭・心・体のクセ
・本人も親も気づかないことがある
・ポジティブもネガティブもない
子どものクセや才能がどんなに望ましくても、どんなに迷惑であっても、関係ありません。
それを本人や周りが好きか嫌いかに関わらず、その持ち主の個性の一部、「特性」として同等に大切に扱います。
特性が表れる例
「特性」は、「好きなもの」ほどわかりやすくありません。なぜなら、無意識で、自然に、当たり前のようにしていることだから。
でも「特性」を特定するためには、表に見える言動から推測するしかありません。
たとえば「伝える」という行為であっても、特性によってその表れ方は異なります。
- 言葉・語りで伝える
- 図で伝える
- ジェスチャーや表情で伝える
- 数字や論理で伝える
- 手紙で伝える
- 歌で伝える
ほかにも、「特性」はこうしたときに顔を覗かせています。
- 歌や曲を一回聞いただけで覚える
- 人の名前や顔を一度で覚える
- 初めての場所でも道に迷わない
- 計画を立てる
- 新しいことを試す
- 改善をする
- ルールを守る
- 仲間意識が強い
- 人と関係を築く
- 自発的に行動する
- ものごとの関連性や違いに気づく
- 他人の感情によく気づく
- じっくり考える
これらが「特性」の表出の例だといっても、まだピンとこないかもしれません。
まずは「特性」はさりげない瞬間に表れているから気づかれにくいということを認識してください。
年齢や発達段階由来の特性
特性について「あまり変わらず、ずっとそこにある」と書きました。
でも子どもは常に成長し、変化しています。
たとえば3歳の時点で、「これはきっとこの子の特性だ!」と思っても、5歳のときには同じように思わないことがあります。
同じ子の3歳前半と5歳後半では、立っている発達ステージがまったく異なります。実は特性だと思っていたものが、そのときの年齢や発達段階によるものだった可能性があります。
逆に、発達段階が進んでいるのに続いている傾向があるのであれば、それは「特性」である可能性が濃厚になります。
年齢や発達段階由来の「一時的な」特性に惑わされないためには、以下の視点を持っておくことです。
- 時期とエピソードのメモを取っておき、半年後、1年後に見返してみる(経時的に観察する)
- 同年齢の集団と比較してみる(水平的に観察する)
- 兄妹が同年齢だったときと比較してみる(似た環境で育っても出現する差を観察する)
比較するときの注意点は「あの子は〇〇が得意だけど、この子は得意じゃない、だからあの子のほうが優れている」のような順位と結びつけないことです。
「特性」はポジティブでもネガティブでもなく、個性が部分的に表出しているものです。優劣はありません。
もっと子どものことをよく知りたいという関心や、子どものありのままを受け止める覚悟を持っていてください。
子どもの特性を知るメリット
「特性」の見つけ方に進む前に、なぜ「特性」を知ってもらいたいかお話します。
子どもの「特性」を知ることは、子どもの個性を理解することです。
個性を理解するのは一筋縄ではいきませんが、いいことがたくさんあります。そのうちのいくつかを挙げてみます。
子どもは、「親が自分のことを理解しようとしている」というだけで親に認知されていると感じます。
親が手や口を出さず観察に徹することで、子どもは自分の決断や行動が尊重されていると感じます。
また自分の特性を発揮しているときは、人は充実感や幸福感、自己有用感に満たされるといわれています。
逆に、特性が発揮されないように我慢したり、特性ではないことを無理してやっているとどっと疲れます。(アナ雪の女王エルサを思い浮かべてみてください。)
集中が途切れやすくなったり、機嫌が悪くなったりします。その結果自己嫌悪になるなど、負のループに陥ります。
勉強や習い事のように子どものルーティンとしてやっていることは、特性を抑え込まず発揮できる方法に合わせることでより楽しく、苦しまずにできます。
子どもが苦しまなければ、それを監督している大人もストレスが減ります。
子どもが嫌がらなければ、大人も機嫌を取ったり無理強いをさせたりしなくてよくなります。つまり、親子の人間関係が損なわれずにすむのです。
おさらいすると、「特性」は抑え込んだり変えたり必要はなく、「足りない」部分を無理して伸ばす必要もありません。
大事なのは、仮説でもいいので「特性」を見つけて、それを活かすこと。活かせる環境を用意すること。せめて抑え込まないこと。そして、いずれ子どもが自分でも再現できるように、自身の特性の活かし方を授けることです。
生きていくうえでは「苦手なこと」がどうしてもついてきますが、「特性」と少しでもかけ合わせることで、より楽しく、苦しまずに切り抜けられます。
それは逃げではなく、生きるための工夫です。
子どもの「特性」を知って、それを活かす方法を身につけることは、子どものQOLを上げることにつながります。
今日から、子どもの「特性」を一つでも多く発見しましょう。
子どもの特性を観察するポイント
さりげなく表出している「特性」だからこそ、普段から長時間子どもの近くで過ごしている人は観察しやすいです。つまり、保護者や保育者や先生が観察役です。
でも、いつも一緒にいると子どもの様子が普段どおり過ぎて、逆に見えないこともあります。
そこで、子どもの特性を浮かび上がらせるための観察ポイントをあげます。
ボーク重子さんによる『世界最高の子育て――「全米最優秀女子高生」を育てた教育法』に記載されているポイントからアレンジしました。
これらの質問を念頭に起きながら、子どもの言動や振る舞いを観察してください。
もう一度、特性の定義をここに置いておきます。
無意識に発揮される頭・心・体のクセ
・本人も親も気づかないことがある
・ポジティブもネガティブもない
親による観察の弱点
大人は子どもよりも経験が豊富です。しかし裏を返せば自分の経験や価値観に縛られてしまう危険があります。
ものの見方が偏るのは人間の性なので、それ自体は仕方がありません。まずは誰しも物の見方が偏るということを自覚しましょう。
そして「子どもはこれが得意なはず」「これが苦手なはず」と決めつけず、見たままを受け入れるつもりで観察しましょう。
また、先生や近所や親戚や友人の考察も聞いてみたりして、他の人の視点も取り入れましょう。
自己中心的な観察を避けるには
人や自分を理解するためのツールやノウハウは、世の中でたくさん研究・発表されています。
いずれも、それ単体で個性を把握することは不可能です。
でもうまく使うと子どもや自分の「特性」を発見する手がかりになるだけでなく、自分だけの偏った見方を少しでも補正できます。
多くのひとに支持されている一部の例をご紹介します。
それぞれが何冊も本が出ているほど奥深いテーマですので、ここで詳述はしません。最後に参考文献も載せておきますので、使いやすそうなものから取り入れてみるといいでしょう。
こうした体系的な考え方をひとつ以上もっていると、それまで理解しづらかった相手の側面に説明がつき、理解が進みます。それがたとえ仮説であったとしても、ひとつの前進です。
子どもの特性がわかったら
観察を経て、子どもの「特性」らしきものがわかったとしましょう。
最初は仮説でも充分です。
今度は、「好きなもの」や「ルーティン」を特性につなげてやってみましょう。
たとえば、ルーティンでは算数ドリルをさせたい。その目的は算数問題を正確に・早く解けるようになることでしょうか?目的が明確であれば、手段は工夫次第です。
ーもし音で思考がはかどるという特性があるなら、書くドリルはあとにして、口頭問題にする。
ーもし感覚で思考がはかどるという特性があるなら、書くドリルではなく、おはじきやそろばんを使う。
ーもしビジュアルで思考がはかどるという特性があるなら、動画やアプリを導入する。
こんなふうに、少しでも子どもの反応が良かったり、長く集中できる方法を探ります。
「書いて」行う勉強は一見当たり前なようですが、そうではありません。
実は「書く」ことは現実世界を言葉や記号に変換して、さらにそれを筆先で再現するという高度で抽象的な技術です。
なかには、書くことが特性の子もいます。
でもそうではない子は、他の方法でも学べるのに、わざわざ「書く」行為に勉強内容を合わせる必要はありません。
合わせるのなら、子どもの「特性」に合わせましょう。
特に新しいことを試したり学んだりするときは大事です。
子どもの「特性」につなげて導入できると、苦手意識を持たずに始められ、その分続けられる可能性も高まります。
決して、苦手とみられる「特性」を無理やりやらせようとしないでください。それは逆効果ですし、信頼関係も損ねかねません。
さらに、この先は実際に検証されていない私個人の意見です。
世の中には、神童や天才と呼ばれる人たちがたくさんいるように見えるかもしれません。
持論ですが、彼らは決して早期英才教育を受けてきたからそうなっているわけではなく、その子の持ち前の「特性」と「好きなこと」を充分にさせてあげられる「環境」が「継続」して揃っていたのではないでしょうか。
それは偶然かもしれませんし、周りの大人の働きかけも少なからずあったかもしれません。
でも「特性」「好きなこと」「環境」「継続」のどれかがかけていても、天才として頭角を表すことはないのではないかと私は思っています。
まとめ
この記事では、子どもの特性を当てるためのステップをご紹介しました。
無意識に発揮される頭・心・体のクセ
・本人も親も気づかないことがある
・ポジティブもネガティブもない
子どもを観察して「特性」をあぶり出す
⇓
好きなことやルーティンと「特性」をつなげる
子どもの「好きなこと」や「特性」探しはこちらの記事を参考にしてください。
「特性」や「好きなこと」をその子の『強み』に変えられるかどうか。子どもが小さいうちは、親の力の見せ所です。
ぜひ、これらの記事を参考に子ども観察を楽しんでください。
■ざっくり「MI理論」とは:人には8つの知能が備わっていて、その人だけの強弱のついた組み合わせで成り立っているという話です。この記事の「特性」の話はこの理論にかなりインスパイアされています。
↓MI理論を最初に提唱したハワード・ガードナー博士の最新の書籍です。
↓こちらは同じ著者の和訳本としては最新のものです。同じMI理論を扱っています。
↓ガードナー博士がアドバイスし、推薦した本。
↓8つの知能に独自の一つを付け加えた「9つの知能」を通して子どもを見ることについて語られています。
↓英語OKな方には、こちらが大変参考になります。学齢期の子どもに特化したMI理論の実践版です。
↓この記事で引用したボーク重子さんの本です。
↓小学生にも読みやすく使いやすい本。
↓新刊で買うとストレングス・ファインダー・テスト1回分の受講チケットがついてきます。子ども向けテストは英語でしか提供されていませんが、まずは大人が日本語版を利用してみて、「才能(特性)を理解すること」を体感してみてください。
↓上記とは違う「ストレングス(=強み)」ですが、子どもを対象としていて参考になります。
↓企業の人材育成コーチと自身の子育てをかけ合わせた「子どもの心コーチング」を提唱している菅原裕子さんの本。本のなかに診断テストが掲載されています。この記事の「特性」よりも広い領域を取り扱っています。
↓ビリギャル、こと『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』の著者でもある教育者・坪田信貴さんの本。心理学を用いた学習指導を取り入れているだけあり、この本も特性と勉強をかけ合わせるヒントが含まれています。
↓占星術というと未来を占うものだと思われるかもしれませんが、私は自己分析のひとつのツールとして活用しています。独学で使いこなすのは難しいですが、この本はワーク形式で比較的とっつきやすいです。MI理論のような心理学アプローチとは異質ですが、あえて違ったインスピレーションが必要なときに。
↓これも占いの部類です。数秘術も誕生日を使いますが、個人的に占星術よりもわかりやすいと感じています。こちらも心理学とは離れていますが、子どもや自分を知る手がかりとして。
↓こちらはたくさんある子育て論を場面別に引き出せるようになっている使い勝手のよい育児書です。MI理論の話も、学力を伸ばす文脈で紹介されています。
↓「特性」をどう伸ばしていくか迷ったら、こちらが役に立ちます。
↓この本でも、子どもの「学びのタイプ」を知って、それを学習計画や環境設計に活かすという考え方です。
実践してみてうまくいったこと、うまくいかなかったこと、ぜひTwitterかお問い合わせよりお聞かせください。