ピンポイントな話題に見えるかもしれませんが、実際はこうしたニッチな進路に関して疑問を持ったときに「どう調べて、どう答えを出すのか」というところを中心に書いています。
ですので、IBでもインター卒でも海外高校卒でも「こういう場合、国内の受験ができるのか」をどう調べるかのヒントとしてお読みください。
まず、これを調べている保護者の方は先入観を捨ててください。
おそらくこれを読んでいる保護者世代の方が最後に大学受験に触れたのは少なくとも15~25年以上前のことだと思います。
その当時は初代iPhoneも発売されていなかったはずです。よくてガラケー全盛期です。今はiPhone13だし、GIGAスクール(1人1台端末)時代です。
大学受験に限らずですが、自分が経験してきたことが通用しないことのほうが多いと思っておいたほうが無難です。
時代は常に変わり続けますし、そのスピードも加速していきます。でも必要なときの「調べ方」の勘所を磨いておきましょう。
A levelとは
そもそもA Levelに馴染みがない方もいると思います。
正式名称はCambridge International AS & A Levelsと言います。日本においてはAレベル(エー・レベル)と称されることが多いように思います。
AS LevelsはSubsidiary Levelsの略で、A LevelsはAdvanced Levelsの略です。
以下、公式からパクります。
Cambridge International AS Level のプログラム修了には通常1 年間、Cambridge International A Level には2 年間かかります。評価は各プログラムの修了後、行われます。大半の科目は Cambridge International AS Level から開始することができ、Cambridge International A Level に延長することが可能です。(中略)
1951 年以降、提供されてきた、これらの資格試験はUniversity of Cambridge(ケンブリッジ大学)の一部である、Cambridge Assessment International Education によって実施されています。(中略)
50 の幅広い科目から選択が可能で、ほとんどの科目をどのような組み合わせででも受講頂けるように配慮されています。必修科目はなく、生徒は希望の科目を専攻、あるいは幅広い分野を学習することも自由自在です。生徒に選択をする自由を与えることによって生徒は学習期間を通して、やる気を維持するのに役立ちます。
生徒は通常、AS Level で4科目、A Level で3 科目を学習します。一般的にはイギリスの大学への入学にはA Levels を3つ取ることが必須となっています。
Cambridge Assessment International Education 「Cambridge International AS & A Level 大学へのガイド」https://www.cambridgeinternational.org/Images/503001-as-a-level-factsheet-japanese.pdf(参照日:2022-02-16)
具体的な科目や評価方法は、ケンブリッジ・インターナショナルのサイトを参照ください。
つまり、A Levelとはイギリス式の大学入学レベルの学力を証明する科目別の教育+試験のプログラムです。イギリス以外の国でも認められています。
同じケンブリッジ系列で下位の学年で受ける教育+試験プログラムが、AS LevelやIGCSEです。
たまに勘違いされますが、A Levelがないと海外受験ができない(または不利になる)ことはないです。日本の高校出身であっても通常は高校課程として認められ、受験資格はあります。
日本でA Level
そもそも現在日本にいながらA Levelってできないのでは?と思われるかもしれません。
実は方法はあります。
- 数少ないA Levelを実施している国内の学校に入学・転校する
- 一条校とは限らない
- 現在、一条校では静岡聖光学院だけかと思います。
- 現在実施していなくても、ケンブリッジ系の学校の計画を調べる(聞く)などすると将来的にやる可能性がある
- 一条校とは限らない
- オンラインで提供されているA Level課程を履修する
- 国内・海外どちらでも
- ダブルスクールも可能だし、逆に普通の高校に通わずにオンライン一本も極論あり
試験は、ロケーションが限られますが国内でも受験することができます。
このように国内にいながら履修する方法はありますが、英語のみで提供されているので相応の英語力は必要になります。
A Levelは国内大学受験に使えるのか
ここまではA Levelのみの話をしてきました。
ここからはA Levelを例にあげて、大学の入学資格の調べ方について書きます。
国はA Levelを認めている
文科省が実施した令和2年度の大学入学者選抜・教務関係事項連絡協議会にて以下のように言及されています。
2016年3月31日、学校教育法施行規則の一部を改正する省令等により、 Cambridge International AS & A Level を修了した18歳の生徒は日本の大学入学資格が認められた。( AS Level のみの修了者を除く。)
令和2年度 大学入学者選抜・教務関係事項連絡協議会「21 日本の大学入学審査におけるCambridge International AS&A Levelの活用促進について(PDF:463KB) PDF」https://www.mext.go.jp/content/20201209-mxt_daigakuc02-100014554_21.pdf(参照日:2022-02-16)
2016年って結構最近ですね(汗)
でも、まだこれだけだと「国内で修了した」A Levelでも大丈夫か、慎重な方は確証が持てないかもしれません。
国内で修了してもOK(条件あり)
文科省ウェブサイトの大学入学資格に関するページ「入学資格に関するQ&A(平成31年1月31日現在)」にはこのようにあります。
日本にあるインターナショナルスクール(外国人学校)を卒業した場合は、その学校が外国の高等学校相当として指定された学校(我が国において、高等学校相当として指定した外国人学校一覧)(12年未満の課程の場合は、さらに、指定された準備教育課程(文部科学大臣指定準備教育課程一覧)の課程を修了する必要があります)であれば、大学への入学資格は認められます。
また、インターナショナルスクール(外国人学校)の所在地が日本であるか外国であるかにかかわらず、国際的な評価団体(WASC、CIS、ACSI)の認定を受けた教育施設(国際的な評価団体認定外国人学校について)の12年の課程を修了していれば大学への入学資格が認められます。
なお、外国の大学入学資格である国際バカロレア、アビトゥア、(フランス)バカロレア、GCE Aレベルを保有していれば、大学への入学資格は認められます。
文科省「入学資格に関するQ&A(平成31年1月31日現在)」https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shikaku/07111319.htm (参照日:2022-02-16)
つまりたいていの場合は行き止まりの進路ではなく、ちゃんと救済の道が想定されているということです。
その他、細かいQ&Aが文科省の「大学入学資格ガイド」に載っています。
このガイドでは、ほかにもIBやインターに関すること、またこんな質問にまで答えてくれています。
マレーシアに所在する 11 年制のインターナショナルスクールにおいて、IGCSE-O レベル資格を取得した後に卒業し、文科大臣が指定した準備教育課程を修了した方には、大学の入学資格が認められますか?
文科省「大学入学資格ガイド」https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shikaku/__icsFiles/afieldfile/2019/06/06/1222303_001_1.pdf (参照日:2022-02-16)
ちなみに上記も日本の大学への入学資格は認められています。
実際の関門は各大学
このように、国の姿勢としては世界の教育を認めて大学の門戸を開こうとしているのがわかると思います。少なくとも、文科省ではA Levelを入学者選抜の論点のひとつとして認識しています。
ただ、多くの方がお気づきのとおり、実際の周知・制度への落とし込みはまだ進んでいないようです。
ここからは個別の大学の話になります。最終的にどんな生徒をどう選り分けて入学させるかは、大学に大きな裁量が与えられています。
つまり個別に要項を紐解いて、該当要件をチェックする地道な作業が必要です。(毎年変わりうることをお忘れなく)
たとえば上智大学の2022年度海外就学経験者(帰国生)入試の出願資格には「国内外を問わず12年以上の学校教育課程を修了した者」とあります。
国際基督教大学(ICU)の2022年度4月入学帰国生入試の出願資格においても「国内外を問わず、当該国の学校教育における通常の12年以上の課程を2020年4月1日から2022年3月31日までに修了した者および修了見込みの者」とあります。
国立の筑波大学は多様な入試制度が設けられていて、正直どれに当てはまるのか迷うほどです。60ページにも渡る「令和4年度入学者選抜要項」では、推薦入試や帰国生徒特別入試においてA Levelに言及があります。
入試制度は国内大学といってもひとくくりにはできず、各大学によってその基準や表現は異なります。
レファレンス一覧
入試制度は、数年ごとに変わっていきます。
私は、国内の選択肢は広がる方向に向かっていくと予想しています。
時代は常に変わり続けますし、そのスピードも加速していきます。必要なとき、自分(我が子)に適した「調べ方」の勘所を磨いておくことを勧めます。
人に聞いたことを鵜呑みにするよりも自分で情報源に近いところを調べることを大事にしてください。
私が上に書いたことなんて、公開した瞬間から古くなっていきます。
文科省
国内の教育のことなら、まずお上の方針を調べます。
大学団体
大学は横の関係も大事にしています。文科省の方針に賛成・反対する声明や提言を出すとしたら、このあたりの団体で足並みを揃える可能性があります。
教育メディア・業界紙
他に大きな流れをチェックするとしたらこのような教育系のメディアと業界紙ですね。
大学横断検索サイト
個別の大学の入試要項を紐解いていくための「出発点」として使えるサイトと書籍を挙げます。
出願要件は学校ごとに違いますし、ときには学部単位で違うこともあるので、かなり注意が必要です。
学校・学部・学科の入試方針は、以下のように毎年変わる可能性があります。
- 今まであった制度がなくなる
- 今まであった制度が変わる
- 新しい制度が始まる
常にフレッシュな情報を仕入れながら、いろんな可能性にオープンでいましょう。
「出発点」としては、総合型選抜や帰国生入試をやっている大学です。
帰国生入試といっても国内・海外問わない場合もあります。また、総合型選抜は一見関係なさそうですが、よく読むと該当する場合があります。
【スタディサプリ進路】高校生注目!学校パンフ・願書請求でプレゼント書籍で言うとこちら。いずれも帰国生向け以外にも適用できる入試が含まれています。
このあたりを活用してざっくりと大学と学部のリストをつくり、あとは個別に大学の入試要項をひたすら読んでいく、という泥臭い作業になります。
少しでも参考になりましたら嬉しいです。
別記事ではインターナショナルスクールや海外の学校から日本の小中高校に編入学するケースについても書いています。