国際バカロレアについて読者さんからご質問をいただきました。
あくまで私の見解ですが参考までに記事にしておきたいと思います。
補足を書き足していたら私の思想が色濃く出てしまい、長くなっております。
海外のIBDPに進学するにはどうすればいい?
質問者さんに許可を頂いたうえで、ご質問を紹介します。
質問をくださったのは、現在日本の私立中学に通うお子さまの保護者さんです。
娘の中で、中学受験を終え、次は大学受験に向かって進んでいくにつれ、日本の教育が社会に出るための学びではなく、大学というものに入るための勉強なのではないかという疑問が芽生えたようです。
それを学校の(中略)先生に相談したところ、国際バカロレアを含め、高校での交換留学についてお話をして下さったそうです。
勉強への疑問が芽生えたお子さま。ここでは引用しませんが、この学校の先生も保護者さんも、お子さまの疑問に真摯に向き合われている様子です。
一般的に国際バカロレア認定校でプログラムを受けるには日本でいう高校2年、3年にあたる2年間とお聞きしました。(中略)
認定校に入るためにどんな審査を通過しなければいけないのか、それまでに取っておかなければいけない資格などあるのか皆様どんな準備をされて留学に臨まれるのかを教えて頂けたら有り難いです。
学年に応じてプログラムが分かれる国際バカロレア課程のうち、ディプロマ・プログラムは高2と高3にあたる大学入学の準備のためのカリキュラムです。
どこの国でもいいのですが、海外で国際バカロレアのプログラムを受けるためには高二までの段階でどんな準備が必要になるのでしょうか?
またIELTSや英検などの基準はあるのでしょうか?
保護者さんは、日本にも国際バカロレア校があることを承知の上で、あえて海外の国際バカロレア認定校に進学するケースを想定されています。
そして、高2からの国際バカロレア・ディプロマ・プログラムに進学するにはどうすればいいのかというご質問でした。
国際バカロレアとは
ご質問の内容を補足します。
国際バカロレア(通称IB)とは、日本の文科省も認めている国際的な教育プログラムのことです。
保護者のお仕事で転校(特に国際間)が多いお子さまが、どこでも互換性のある教育を受けられて、大学進学も不利にならないようにできたカリキュラム、という経緯が通説としてあります。
その背骨となっている理念は崇高です。
国際バカロレア(IB)は、多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成を目的としています。
文部科学省IB教育推進コンソーシアム
国際バカロレアの目的を達成する学習者の姿はこちら。
探究する人
文部科学省IB教育推進コンソーシアム
知識のある人
考える人
コミュニケーションができる人
信念をもつ人
心を開く人
思いやりのある人
挑戦する人
バランスのとれた人
振り返りができる人
このような人物を育てようとする教育課程が国際バカロレアです。
より詳細は、こちらもご参照ください。
現在日本では、国際バカロレアを日本語か英語で修了できます。まだ一部の学校のみですが。
国内外の国際バカロレア校を探すときはこちらを。ただし外国からの生徒を受け入れているかどうかは、生徒の国籍や受入れ国の制度、学校の方針などにもよりますので都度確認するようにしてください。
必要な準備は、進学を希望する学校によって違う
ご質問ありがとうございます。
国を問わず、海外の国際バカロレアを志望されているんですね。
国際バカロレアそのものよりも、各学校によって入学基準が違います。
ここまでできていたら必ず入れる、というものではありませんが、共通してできる準備ですと以下の4つになると言えます。
1.今の学校の成績
2.世の中への好奇心や問題発見力
3.語学力x人に伝える力
4.家を出て自立する練習
それぞれにできる対策があると思いますが、それはお子さまの可処分時間や学習特性、ご家庭の経済的・時間的余裕によっても変わってくるかと思います。
なぜそこまで国際バカロレアを希望されているのか、その背景もわかればさらに選択肢を広げたり狭めたりできると思います。
国際バカロレアのディプロマプログラムは、たくさんあるカリキュラムの一つで、向き不向きはあります。さらにいうと学校自体の向き不向きもあるので、一概にはくくれないと感じています。
お子さまの大事な進路のためにも、参考になりましたら幸いです。
回答に書ききれなかったこと
ここからは、私が回答のメールに書ききれなかったことです。
国際バカロレアについて私見
国際バカロレアの認定校は世界にたくさんありますが、他にもたくさんある選択肢のうちの一つです。
国際バカロレア校だからといって、ひとくくりにすることもできません。学校ごとに毛色は違います。
たとえるならば「日本の学習指導要領に従っている公立の高校」だからといって、ひとくくりにはできないようなものです。
私個人は、国際バカロレア自体についての感想は「よくもまあこんなに大規模で複雑で細かい仕組みを作って、ここまで浸透させたな」以外に特にありません。
カリキュラムうんぬんよりも、この壮大な仕組みを各学校ではどのように運用しているのかが気になります。
どんな先生が教えているのか。どういうリソースがあるのか。生徒たちの顔色はどうなのか。そういうことに目が向いてしまいます。
ついでにちょっと危ういなと思うことについてヒトコト。
国際バカロレアを通らないと入学できないという大学はありません。たいてい他のルートがあります。
逆に、国際バカロレアを通ったから大学入学ができるというものでもありません。なんらかの入学審査はあります。
国際バカロレアは、魔法の鍵ではないのでその点ご注意ください。
高校選びについての私見
高校を意図して選ぶのであれば。
ましてや海外留学という、お金と時間と精神力をゴリゴリ消費する道を選ぶのであれば。
国際バカロレアに限らず、数ある選択肢をフェアに並べて、目の前の子どもの向き不向きや挑戦意欲、そして経済性や機会損失も見ながら決めてほしいと常々思います。
長い人生において、高校の数年間をどこでどう過ごすかは、昼食をうどんかソバにするくらいの違いです。
無理して選ぶものではない。
でも選択に時間と気持ちを割くのなら、ぜひ広い視野で見比べてほしい。ベネフィットだけではなく、リスクにも適度に敏感でいてほしい。
とはいえ、私を留学に送り出すときに親がそこまで考えていたのかどうかは確かめようがないし、私は親に与えてもらった選択肢のなかから「在校生の人数」だけで選んだので、「お前が言うな」と言われても仕方がありません(笑)
どんな進路でも今からできる準備
長くなってしまいましたが、ご質問者さんへの回答でも書いた「今からできる準備」について補足します。
国際バカロレア校への進学を目指すためだけでなく、将来の選択肢を広げたい方にはどれもおすすめします。やっておいて損はありません。
大事な順に4つ挙げます。
一番大事なのは今の学校の成績
どんな学校に通っていたとしても、公立でも私立でもインターでも。
いま置かれている場所で結果を残せていないと、次の出願先への説得力が出せません。
海外留学(語学留学ではなく、一般の学校への留学)を目指しているなら、十中八九、成績表を求められます。
GPA(成績の平均値)で足切りをしている学校もあります。
そのときになって「もっと頑張っておけばよかった〜」となっても後の祭り。
成績は、あとから取り直せないので普段からの積み重ねが大事です。
ただ、どうしても環境や状況が許さない事情もあります。そういうときは、少しでも成績が出せるように環境や状況を変えられないか検討してみてください。
たとえば偏差値が高い学校にいても成績が振るわないのなら、もっと成績が出しやすい学校に移るのもひとつの戦略です。(ケースバイケースなので文字通り受け取らないように)
塾や家庭教師を利用するひともいます。
成績が今ひとつだけど転校も引越も塾の利用もできないときもあると思います。どうしてもだめなときは、成績が影響しない進学先を探せば、あります。
リサーチ力と情報が必要にはなりますが、望みを捨てる必要はありません。
ただ、取れる成績は取れるように、できる足掻きはしてください。
オンラインの個別指導(家庭教師)は、いまや家庭学習のスタンダードです。
オンラインだと場所も時間もフレキシブル。移動時間は不要、部屋の片付けやお茶出しも不要、さらに引越をしても同じ先生に教わり続けられます。
また、個別指導はペースや内容もカスタマイズができます。苦手な部分は丁寧に、得意な部分はたまに復習など、効率的に勉強を進められます。
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世の中への好奇心や問題発見力
幼いときのまっすぐな好奇心。「もっとやりたい」「これどうなっているの?」
これを、中高生や大人はどれくらい持ち続けているでしょうか。
好奇心を測ることは難しいです。
その現れ方は人それぞれ、ひとつのモノサシでは測れません。
でも好奇心、探究心、改善したい気持ちを満たし続けていれば、なにかの形で表れてくるものです。
たとえるならば魚類学者のさかなクン。
子どもがどんな種を持って生まれてきたのか、それは咲くまでわかりません。
小さいうちから種を育てるコツは↓の記事が参考になるかもしれません。
語学力x人に伝える力
語学力は一番大事ではありません。
翻訳・通訳テクノロジーも進化していて、私もめちゃくちゃ頼りにしています。
でもやっぱり無視できない、軽視できない外国語力。
母国語+第2言語のどちらも大事です。お互いを足場にして伸びていきます。(第3以上も目指せるならベター)
そして言語ができても、表現力はまた別の話。当人が一番表現しやすい方法があるはず。
それをひとつでも伸ばしてあげられたら、周りとつながる力になります。情報を得る手段になります。味方をつくる力になります。
表現力には、非言語的な方法も含まれます。
私も自分の子育てでは子どもの表現力を意識して、「話す」ことを重視しています。
家を出て自立する練習
家にいるときは、自分で身の回りのことができる練習を。
余裕があれば、キャンプやサマースクール、実家などに預けて物理的に家や家族や日常ルーティンから離れる練習を。
子どもはいつかは家を出ます。家を継ぐ予定がある場合も、外の世界を知って、いろんなつながりをつくっておいたほうがいいです。
中高から留学を検討している方は、学校からすると「この子は家から離れる心身の準備はできているだろうか」ということが気になります。
そのときに「○歳のときに○週間、単身でプログラムに参加できました」と言えたら、学校だけじゃなく本人にとっても自信になります。
保護者の子離れの練習にも。
具体的に家を離れる予定がなくても、子どもが少しでも自立してくれるのは保護者の楽にもつながります。
全方位からおすすめです。
さっきも紹介した記事ですが、私も普段の育児において「子どもが自分でできることを増やす」ことを念頭においています。
お気づきでしょうか
お察しの良い方はお気づきでしょうか。
上に挙げた4つができるようになった子どもは、国際バカロレアが育てようとしている「学習者像」に酷似していることに。
もちろん国際バカロレアは、家で真似できるような易しいものではありません。なんなら教育のプロが揃っている学校でも再現は難しいものです。
それでも、近づくためにできることがあります。
今からできることをコツコツ重ねていく。
子どもをよく観察して、子どもに向いている進路の情報収集を怠らない。
仮説を立てて、試してみる。
そうすれば、その子だけの道が開かれます。その選択肢のなかに国際バカロレアがあれば進めばいいし、ほかにもいい選択肢はあるはずです。
子どもの種がどんなふうに花開くのか、心から楽しみにしています。