萩原麻友(ハギワラマユ)のブログへのご訪問ありがとうございます。
このブログでは、子育てや教育や進路に関する情報を発信しています。
最近読んだ本によって、私の原体験のひとつが呼び起こされました。
それがどんな本で、何が呼び起こされて、どんな考えが巡ったか、について独断と偏見まじりに書き記しておきます。
- 私が読んだ『コスパで考える学歴攻略法』とは
- 私の「コスパが悪い」学歴
- チャンスを最大化するという視点
『コスパで考える学歴攻略法』を読みました
今回私が読んだ本はこちらです。
新潮新書で2022年の11月に発売された『コスパで考える学歴攻略法』。
この本は、著者の言葉を借りると「ファミコン世代の保護者のための子どもの進路の攻略本」です。
著者は藤沢数希さんで、彼は日本の大学を出て、海外で物理と計算科学で博士号を取得し、外資系金融機関を経て、現在は投資と作家業を生業とされているそうです。
著者の経歴を生かした観点や言い回し、事例が面白くて、一気に読めました。
結局なんの本なのか
タイトルにある「コスパ」や「学歴攻略」というキーワードだけ見ると、
日本で偏差値上位の大学に行くための近道指南のように捉えられるかもしれません。
この本では、小学校受験やインターナショナルスクールや海外留学もあるけど例外であり、日本の一般的な家庭は中学受験か高校受験の二択に迫られるとして、
中学受験と高校受験、どちらを選択するべきか。
そして、それぞれでベストな結果を引き出すにはどうすればいいか。
さらに、無視できない「英語教育」や「海外留学の早期化」の流れとの向き合い方にも軽く触れています。
著者はそもそも世界と日本の「学歴観」にはズレがあることを踏まえたうえで、
世界的に見てもそのズレを最大限に利用するとしたらこうではないか、
という提案をしているように受け取れます(あくまで私の主観です)。
本の目次
興味がある方向けに目次を載せておきます。
- 第1章 たかが学歴 されど学歴
- 第2章 日本の高校までの教育レベルは高い
- 第3章 学校のカリキュラムは何を目的に作られているのか
- 第4章 中学受験はダービースタリオンだ
- 第5章 格安の公立中学からの高校受験ルートで学歴獲得競争に勝つ
- 第6章 日本の教育に足りないものを家庭で補う
呼び起こされた原体験
この本には共感できる部分、概ね同意だけども補足したくなる部分、発見だった部分など、いろいろありました。
なかでも「いやほんと、そうなのよ」と膝を打った部分を引用します。
実は本流からは少し離れた部分なのですが、お付き合いください。
日本の大学には日本の大学の良さがある。
…アメリカの大学などでは、…かなり厳しい宿題が課せられ、大学生は大いに勉強させられる。
…一方で、日本の大学は、基本的には放任である。
…(日本の大学では、)学問が好きな学生は、アメリカの大学の講師が貸すような課題図書や宿題のレポートなどに振り回されず、
自分次第で深く勉学に励むことができるのだ。
ある意味で、アメリカの大学のほうが学生を管理が必要な子供扱いしていて、
日本の大学のほうが自主性を重んじて大人扱いしている。
藤沢数希. “第2章 日本の高校までの教育レベルは高い”. コスパで考える学歴攻略法. 新潮社, 2022, p.68.
これ。
まさに私がアメリカの大学を中退して、日本で再受験した理由を言葉にしてもらった感覚でした。
先にお断りしておくと、
著者も私も、アメリカと日本の大学教育に優劣をつけようとはしていません。
生徒にはそれぞれ向き不向きがあると感じています。
私のケース
私はアメリカの高校ボーディングスクールで「アメリカの大学準備」としてアカデミックも課外活動もゴリゴリやっていました。
>>【経験談】年間300万円するアメリカのボーディングスクールを卒業した日本人が質問に答えます
すべては母親に刷り込まれていた「アメリカの大学に入りやすくするために」です。
そのおかげもあって、ウィスコンシン大学マディソン校に入学。
(マディソンは、名門州立大学”パブリックアイビー”の常連校です。)
マディソンでの1学期目の成績はオールAでした。
でも1度目の大学は違った
さすが高校の教育です。
アメリカ式にゴリゴリ勉強&活動する大学でも点数を取れるような課題との向き合い方、タイムマネジメント、学習習慣などは完全に叩き込まれたことがはっきりしました。
でもそれは、著者がいうように、ゴリゴリ勉強&活動することと引き換えです。
すでに高校でゴリゴリやってきた私には、このアメリカンな方法はもう充分でした。
18歳の時点で特に学びたいことや、やりたいことがなかった私にとっては、
このアメリカンな方法でしかたどり着けない未来があるとも思えませんでした。
日本の大学ならもっとほかの学び方ができるし、私にはそっちがいいと直感しました。
ウィスコンシン大学の1学期目、高校の親友に電話で相談しながら、最後にはボロボロ泣きながら進路変更を決断したのを覚えています。
(この親友とは2021年に15年ぶりに再開)
それまではまじめにゴリゴリな勉強&活動スタイルの信者でしたので、断腸の思いでした。
そして数カ月後には日本の大学を帰国枠受験し、無事入学したのです。
高校とアメリカはやりきったので、私にはなんの後悔もありませんでした。
2度目の大学は合っていた
日本の大学に入ってからは、いろんな業種でアルバイト、インターン、ボランティアをして、いろんな国にも行きました。(プロフィール参照)
福井県で小学生キャンプの引率をしたり、
西アフリカの幼稚園運営のファンドレイジングをして、実際に現地を視察したり、
ハワイでクリニックのインターンや、電話受付のボランティアをしたり。
大学では教育学部にいながらも教職課程には手を付けず、
他学部の授業をつまみ食いしたりと、いま思えば好きな勉強だけやっていました。
アメリカのままだと、私にはきっとできなかっただろうと思います。(あくまで私の場合。)
ちなみに成績はオールAとはいかなかったけど、優・良・可の3段階評価で、優の数が一番多かったです。
大学が正式なGPAを出さないので自前で単純換算すると3.66みたいです。
いずれ大学院出願などで提出が必要になってもまぁ大丈夫でしょう。
チャンスを最大化できた(主観)
『コスパで考える学歴攻略法』では「日本の大学は放任」と書かれています。
だから学生は勉強しなくて済むから遊んでしまう。
だから日本の大学なんて行っても学ばない、という見方も一理あります。
それが相容れないならゴリゴリ勉強スタイルの大学に行けばいいとも書いてあります。
でも私はまさにこの「日本の大学の放任さ」のおかげで、私にとって最大限の学びができました。
英語には「take advantage of~」という表現があります。
直訳すると「機会を利用する」です。
そのとき持っているリソースを最大限に活かして、機会に飛びついてみる。
そこで蓄えたリソースでまた次に飛ぶ。
軸には、「自分の興味関心」「自分の得意・好き」「希望するライフスタイル」などの指針があります。
どこが適しているかは人それぞれだと思います。
その当時の私にとっては、日本の大学でした。
これからはますます学歴よりも実績重視な時代に
出身大学の名前は、日本や一部の業界など局所的にはちょっとした”タグ”として機能しますが、
広い世界でみると相対的な価値は下がってきているような気がします。
でもどんな機会にでもリスクを取って飛びついてみた経験は、必ず実績として残ります。
そしてその実績を評価したがっているひとは、必ずいます。
実際にそんなひとたちが増えてきていると私は感じます。
リスクを取るスキル
「機会に飛びつく」というのは、スキルだと思います。
練習するほど身につく、後天的なスキルです。
結果には運の助けもあるかもしれませんが、やはり運だけでは説明がつかない部分もある。
私がこのスキルの重要性に気づき、はからずも磨けたのは、私の場合はボーディングスクールに行かせてもらえたからです。
でも実は、気づきさえすれば、ボーディングスクールじゃなくても磨ける。
実際、私が「実地も座学も好き勝手に試していく」姿に刺激されて動き出したという非ボーディングスクール生の友人が複数います。
私が気づいていないだけで、他にもいるかもしれません。
目の前の機会に気づき、試す。それを繰り返す。
どこにいても、やることはそれだけです。
アメリカのゴリゴリ式でも、日本の放任式でも、それができる環境ならそこが合っているのだと思います。
まとめ:コスパが悪い進路も悪くない
私は、日本のインター小中→アメリカのボーディングスクール→アメリカの大学→日本の大学卒業という「Jターン」の学歴を経ています。
自分がまさか日本の大学を、しかも東京大学を志望する世界線なんて、その半年前まではまったく考えもしませんでした。
仮に幼少期から東京大学を目指していたら、もっと経済的なルートはたくさんあったと思います。
現に、私が出身の大阪にはその当時も、公立も私立も有力な選択肢がたくさんありました。
それを考えると、私が描いたJターンはかなりコスパが悪いです。
繰り返しますが、私が辿った進路はコスパが悪い。
でもコスパが悪い進路も悪くない。
そう思います。
この本のタイトルが「コスパが良い」ではなく「コスパで考える」なのは、きっと意味が有ることだと思っています。
『コスパで考える学歴攻略法』は、「一般の保護者向け」に「進路に対する考え方」について解説している実用書です。
(実用書とは、暮らしや生活や仕事に役立つ情報を一般の人向けに解説した本のことです。)
以前「子どもの英語勉強法」の記事で、私は実用書には「3つのカテゴリ」があると書きました。
その3つのカテゴリとは、
- 研究者・専門家による研究成果の発表
- 個人的体験談
- そのジャンルを実際に教えてきたプロによる豊富な事例から抽出された成功論
です。
今回ご紹介した本は、2の個人的体験談の比重が高いように私は考えています。
つまり、教育や受験についての研究者・専門家・教育者ではない、個人の体験から得られた知見がベースの本である、ということです。
ですので、ここに書かれていることがすべてではなく、あくまで個人の見解であることを踏まえたうえで、一種の娯楽としてリラックスして向き合うタイプの本です。
ほかにも、似た感じで「一般の保護者向け」に「進路に対する考え方」について解説している本を挙げておきます。
私はほかにも「読書記録」的な記事を書いています。
普段から私は図書館や書店をよく利用していて、読んだ本はReadeeで管理しています。