萩原麻友(ハギワラマユ)のブログへのご訪問ありがとうございます。
このブログでは普段、子育てや教育や進路に関する情報を発信しています。
今回は、2023年6月に実施した海外の学校見学で感じたことを率直に書いてみます。
私自身がボーディングスクール出身であり、日本の保護者やご家族をボーディングスクール見学にお連れしている立場でありながら、「ボーディングスクールのデメリット」を語るとはなにごとかと思われるかもしれません。
これまでもボーディングスクール関連の記事を書かせてもらっています。
>>年間300万円するアメリカのボーディングスクールを卒業した日本人が質問に答えます
>>ボーディングスクールが育てるのは「エリート」ではない。実は世界で通用する『○○力』を鍛える場所。
でもあえてデメリットにフォーカスした記事は書いていないかもしれません。
こちらは近いかもしれませんが、ボーディングスクールフォーカスではないし。
どんな学校にもメリットがあれば、デメリットもあります。
最近思うのは、選択肢があるなら「デメリットを比べてみて、どちらが許容できるか」という視点を持つことも大事だということです。
ちょっと保守的すぎるでしょうか。
でも
メリットは学校が大声で語ってくれますが、それが即イコール我が子のメリットになるとは限りません。
が、
デメリットだな、と感じることはだいたい不動でデメリットであり続けることが多い。
と私は思います。
たとえば賃貸物件を比べるときに。
最初からデメリットに感じがちな家賃の高さや、駅からの距離、日当たりの悪さなどは、どうあがいても変わりません。
でもメリットだと思っていたはずの部分って「あれ、思っていたほどじゃなかったかも?」ってなることありませんか?
最低限の希望を満たしている選択肢であれば、メリット同士を比べるのは早々に切り上げて、
デメリット同士を比べるのも検討してみてください。
こういうときネガティブマインドもたまには役に立ちます(笑)
ということで前置きが長くなりましたが、ボーディングスクールのデメリットだと私が感じたことを挙げていきます。
食事は子ども任せ
小中から高校に近づくに従って、生徒には裁量が増えていくことが多いのですが、そのひとつに普段の食生活があります。
基本は学校が提供する日替わりメニュー+サラダバーなどのラインアップです。
いくら食事の選択肢を誇る学校であっても、ビュッフェである限り、お皿に乗せるものは個人の好みに偏ってきます。
間違った知識や、単純に時間不足などで、
タンパク質不足、繊維・ビタミン不足、炭水化物過多など、
大事な成長期に必要な栄養が不足したり、不要な栄養を取りすぎたりする可能性があります。
食堂以外でも、カフェでの飲食、売店での買い物などで、食物を摂取する機会はたくさんあります。
私も、留学中やらかしました。
ご褒美と称して、毎週お友達と一人1個ずつ1pint(約480ml)の劇甘アイスを食べていました。
平日の休み時間には、劇甘のコーヒーを飲んでいました。
好みのデザートが並ぶ日はおかわりしまくっていました。
留学後に獲得した体重は、もちろん人生最高に。(妊娠中を除く)
そして悲しいことに、帰省するごとに虫歯が見つかり、歯医者通いをして帰国中の貴重な時間を費やしました。(これも当然)
体重はあとから戻すことができますが、取られた歯の神経は戻ってきません(泣)
ビュッフェスタイルだと、子どもの食事内容が偏っていても、親は知ることがありません。(毎食じゃなくても、フィクスドの食事が定期的にある学校もあります)
まだ低学年だと「お肉も(野菜も)食べようね」など、こまめに指導が入るかもしれませんが、高校生にもなるとそれはあまり期待できません。
また、先生の目が届かないところで何を食べているか飲んでいるかなんて、もう無法地帯です。
母校ではサラダバーに人をいれて、こんなサラダボウルを作ってもらえるように工夫しているようでした。
これはこれで混んでいるときはタイムアウトしそうだけども。
というわけで、子どもは自分の口に入るものを自分で選ぶようになっていきます。
学校の食事が口に合わない、時間が限られていて満足に食べられない、買い食いすることができない。こういう場合もあります。
食べ過ぎや栄養の偏りも問題ですが、全体的なカロリー不足も心配ですね。
あまり心配しすぎるのも毒ですが、
子ども自身が自分の体をケアしていけるように定期的に、年齢に応じた知識をいれておけると安心です。
睡眠も子ども任せ
これもどちらかというと高校生寄りの話です。
学校によっては、厳格に消灯時間を決めて、Wifiも切って、タブレットやスマホ端末も預かっているような学校もあれば、
子どもの自主性を信用して、消灯時間を決めない学校もあります。(ただし騒ぐのはNGな時間帯はある)
消灯時間があったとしても、生徒たちは部屋の目張りをしたり見回りの時間を把握したり、隠しスマホを持ったり、あの手この手を使っています。
起きていたい子は、どんな手を使っても起きているし、
逆に寝れる子は、そんな子たちを気にせず寝ます。
これは、日本の我が家にいても一緒かもしれませんね。
見た目や服装に口出しできない
朝「おはよう」と子どもを見ると、寝癖がすごい。
食事のあとの口の周りが汚れている。
スカートが短すぎる。
ベルトを忘れている。
などなど、一緒に住んでいるからこそ見える子どもの見た目や服装の「至らなさ」。
一緒に住んでいるときこそ親は口を挟めますが、
ボーディングスクールに送り込むと、その様子はまったくわからなくなります。
小学生レベルでしたら、寮母さんたちが一生懸命身だしなみを整えてくれますが、
中高生にもなると見事に放ったらかしです。
最悪の場合、同世代の周りの嘲笑で気付かされる始末。
身だしなみの校則が厳しめの学校だと、罰を受けてしまうことにもなりかねません。
髪の毛を切る頻度や私服の組み合わせは、校則に引っかからなかったとしても、学内ヒエラルキーのプレイスメントに残念ながら関係してきます。
ちょっと気にするだけで違うのに、と思っても、子どもは無頓着です。
寮の中で服・靴・アクセサリーの貸し借りは日常的でした。それはそれで、普段のコミュニケーション(たまにトラブル)のきっかけになっていたと思います。
ちょっとした身の回りの世話
できなくても超困るわけじゃないけど、できたら重宝する生活スキルと知識があります。
たとえば、
- 部屋の整理整頓
- 服のたたみ方
- 素材に合わせた服のお手入れ方法や頻度
- 余り物で料理
- ちょっとしたスペースのホコリを取って、水拭きして清める
- トイレを次の人が使いやすいように使う
- お風呂(シャワー)を次の人が使いやすいように使う
- ボタン付け
- シミ抜き
- ほつれ・穴あきのケア
- 靴ずれのケア
- 汚れた靴のお手入れ
- 肌や髪のお手入れ
- ヘアメイク
- ファッション
などなど、
毎日の生活を少しでも快適に豊かに保つコツです。
ひとつひとつは大したことなくても、一つでもできることがあれば、寮生活ではかなり重宝します。
昔の寮仲間は、「部屋の整理整頓」をほかの寮生から受注しておこづかい稼ぎをしていました(笑)
こうしたスキルや知識はどこにでも転がっていますが、意識しない限りは身につけようとしないものです。
親がそばについていれば、何かの折に見せたり、「一緒に覚えよう」など誘ったりできるかもしれませんが、
日課が決まっていて忙しい寮生活、そして忙しい寮母さん。
そんなことをわざわざ教え教わる機会は、ボーディングスクールでは期待できません。
日本でしか学べない文化
海外と日本を行き来していると、日本独特の文化があぶり出されてきます。
どれも「良い」「悪い」とは簡単に言い切れません。
たとえば、
- ご近所づきあい(子ども会、回覧板、おすそ分けなど)
- 贈答文化(お土産、お歳暮、お中元、「お返し」など)
- お見舞い
- 敬語など言葉遣い
- 各種儀礼(お宮参り、七五三、成人式、お葬式など)
などなど。
日本ならではの思いやりの表し方だと思います。
実は私自身は数年前から年賀状のやりとりをしていませんが、それは私の心が置いていかれている気がするからであり、
ほかの方法やタイミングで、自分が得意・好ましいと感じる表し方を取り入れることはいまだにあります。
なんでも「しきたり」として丸呑みするのではなく、個人として思考して取捨選択してもよいと思います。
このあたりの「表し方」「受け取り方」は、私も日本に本帰国して数年経ってからようやく実感してきたことです。
こうした日本ならではの文化は、ボーディングスクールに行くと感覚がつかみにくいかもしれません。
その感覚なしで育っても、大きく困ることはないと思いますけどね。
子どもをボーディングスクールに送り出すなら、子どもに権限を譲渡するつもりで
ここに書いたデメリットってほとんど全て「親目線のデメリット」であって、子どもサイドから見たら天国かもしれませんね(笑)
どこで何をしていても、親子が親子であることには変わりません。
が、一度家から出してしまうと、ボーディングスクールも大学生の一人暮らしも変わりません。
子どもは、自分の好きなときに好きなものを食べる楽しみを覚えるし、
好きな姿勢でダラダラしたり、好きなひとと過ごすことを覚えます。
子どもが新しい生活で新しい価値観や考え方、生活習慣に触れるにつれて、
我が子がなんだか自分の子どもじゃなくなってしまったような錯覚すら感じるかもしれません。
でも、それは子どもの感性と成長力がおおいに発揮されている証拠でもあります。
あれもこれもたくさんたくさん吸収して、何度も変化を遂げて、最終形態に近づきます。
「はらぺこあおむし」みたいですね。
いろんなものを取り入れ、それがろ過されて、立派な大人になるまでは少なくとも数年かかります。
その過程は見栄えしないことも当然あります。
子ども本人が自身の変化に戸惑うこともあります。不安になります。
保護者が遠くからできることは、
子どもの変化を受け入れ「どんなあなたでも親子は親子。愛情は変わらない。」というメッセージを発し続けることじゃないでしょうか。
そうすることで、子どももいくらか安心して自身の変化を受け入れ、その後の変化にも前向きになれるのではないかと思います。
これは、元留学生の私が感じることです。
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